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2015年5月10日日曜日

維新の会の選挙公報では説明になっていない、なぜ大阪市を解体するのか市民に説明するべきだ

大阪市を解体し5つの特別区に分割する住民投票が行われる。仕掛け人の大阪維新の会の選挙公報が出来が悪い。「住民投票で賛成を!」と橋下徹氏の直筆サイン入りの広報だ。十分準備をして住民投票に臨んだはずなのに論理構成がぜい弱で理解不能だ。多くの市民がよくわからないというのも当然だ。

訴えているのは次の4つの問題点だ。

1、二重行政のムダ 
2、役所による税金の無駄遣い 
3、進まない改革 
4、住民の声が届かない役所

問題1 二重行政のムダ 
「大阪市と大阪府。ふたつの役所はどちらも巨大な“財布”を持ち、似たような仕事をしています。」

具体例としてりんくうタワーゲートビル、WTC、りんくうタウン、咲洲コスモスクエア地区をあげている。私もこれらは無駄な公共投資の典型と考える。しかし府と市の両方が投資した二重投資が原因ではなく、仮に府か市のどちらか一方だけの投資であったとしても、不必要な採算の見込みのない投資だからムダなのだ。これが二重投資のムダの論拠にはならない。
二重行政のむだを論証するには、現在経常的に行われている二重行政のムダは何かを具体的に例示しなければならない。そしてその二重行政のムダが大阪市を解体しなければ解消できないことを論証する責任がある。
いま維新が進めようとしている「ムダ解消=行政の民営化」は維新のいう二重行政とはまったく無関係だ。私は民営化を進めた方がいいとは考えていないが、民営化は大阪市を解体しなくても首長と議会が決めれば実行できる。

問題2 役所による税金のムダ遣い
「大阪市は通常の『市』の仕事だけではなく、都道府県と同じような仕事もしています。そのために、議会のチェック機能が働きませんでした。」特別区の仕事は「医療・福祉・教育といった住民のみなさまに身近なサービスに限定。余計な仕事もなくなり、議会のチェック機能も働きます」

ここが「都」構想の肝だ。特別区は「医療・福祉・教育といった身近なサービス」に限定して権限を持ち「都」は都市計画など大型投資の必要な仕事を担当するのが大阪市解体の目的だ。しかしその理由にそれぞれの自治体の議会がチェックできるようにするためというから余計に理解しにくくなる。都市計画などの「都道府県と同じような仕事」は大阪府議会はチェックできるが、政令指定都市の大阪市議会はできない。だから大阪市を解体するといのは意味不明だ。それぞれの自治体がしている仕事をチェックするのが議会の仕事だ。住民は議会がその任を果たすよう監視しなければならない。議会が努力し住民が監視しなければ「大阪都議会」だって特別区議会だってその任は果たせない。身近なサービス」でも国民健康保険・介護保険・水道・清掃などは全特別区による一部事務組合に移管される。一部事務組合には区民も一般の区議会議員も参加できない。「身近なサービス」ですら特別区議会はチェックすることができなくなる。

特別区と「都」との階層的役割分担が生活にどんな影響を与えるか充分な情報提供がされた上での市民の合意をとる必要がある。ところが維新は十分な情報提供をしていない。なのに賛成か反対かを市民に決断を迫っている。乱暴としか言いようがない。「身近なサービス」は都市計画と密接に関係している。統一して実行する必要がある。それぞれの自治体が総合的な展望を持つことが必要だ。「身近なサービス」は特別区がするというが医療・福祉・教育を民営化するのが維新の方針である。それをすすめれば特別区の権限は空洞化してしまう。「「都」と特別区がどんな役割分担をし、それが住民の生活にどんな影響をあたえるのか十分な説明と議論とそのための時間が必要だ。「今決めないともう決めることはできない」などというまるでテレビショッピングのような迫り方はやめてほしい。

問題3 進まない改革 
「大阪市議会は改革に反対。今のままでは改革は進みません」

どうしてこれが大阪市の解体の論拠になるのか。市議会が反対するから市を解体して市議会をなくすとは暴論だ。仮に「大阪都」になって「都議会」が知事に反対すれば「都議会」を解体するというのか。首長と議会が議論をすすめて折り合いつけながら協力して行政を進めるのが民主主義だ。住民が直接選挙で首長と議会の議員を別々に選ぶ二元代表制を否定する意見だ。

問題4 住民の声が届かない役所 
「人口約270万人の大阪市に、選挙で選ばれる市長はたった1人、同じような人口規模の京都府では、26人の市町村長が選ばれています」

だから大阪市を解体し、5つの特別区にするというのだ。確かに京都府は人口約260万人で15101村それぞれに首長がいる。しかし維新はその京都府の中に人口約150万人の政令指定都市として京都市があり、1人だけ市長がいることに触れない。議論がフェアーでない。京都では京都市の解体の議論などかけらもない。
そして一番の問題は26人の市町村長と同じ規模の大阪市が解体されると大阪市域には1人の市町村長もいなくなり、市町村長以下の権限しか持たない5人の特別区長だけになることだ。仮に維新が「スモール イズ ベター」と本当に考えているなら。大阪市を分割して5つの市にする提案をすればいい。それをしないのは大阪市を分市するだけなら市に権限とお金が残ってしまう。大阪市域の権限とお金を府に集中することに主眼があるからだ。

今回の住民投票は大阪市を解体し、5つの特別区に分割する提案に対する採決だ。提案者が市民が理解できるように提案理由を説明しなければならない。提案の理由が不明確だから、多くの市民がよくわからないというのは当然だ。維新が説明責任が果たせないなら、提案を取り下げるべきだ。そうしないならこのまま大阪市解体を決めないために反対の人は当然として、良くわからない人も反対票を入れてほしい。