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2011年11月30日水曜日

大阪ダブル選挙が終わって考えること  投票日一日だけの主権者ではなく365日主権者であり続けよう


大阪ダブル選挙が終わって3日が過ぎた。御堂筋もいつもの姿に戻り宣伝カーの喧騒もなくなった。維新の会圧勝と報道された選挙結果に多くの人が関心を持ち、諸所で話題になった。「橋下さんは何からしはるんやろ」と、期待と不安が混ざった声を聞いた。この行き詰まった大阪や日本をいい方向に動かしてくれるのではないか期待をもっている人が少なからずいる。そんな人たちが維新に投票したのだろう。「大阪や日本が今の延長線上ではなくいい方向に変わってほしい」という気持ちはみんな同じだ。しかしこれから「橋下さんがしはる」ことがみんなの暮らしや大阪を本当によくすることになるのかが問題である。注視していこう。観客ではなく主権者として。

投票日一日だけの主権者ではなく、今高まった政治への関心を持続させることが大切だ。大阪のためになることが進められているかに関心をもって知る必要がある。情報源はマスコミ報道だけではなくネットなどを利用して草の根の情報をよく知るべきだ。ぜひやっておきたいことは、大阪維新の会ホームページ http://oneosaka.jp/から彼らのマニフェストをダウンロードし保存しておくことだ。この4年間彼らが何を実行し何を実行しなかったか。実行したことがどんな結果を生んだかリアルタイムに実証する必要がある。橋下氏がその場その場で言うこともよく記憶しておくことも必要だ。前後で脈絡があっているか。首尾一貫しているかよくみていこう。

橋下氏は選挙後、民意に従えと選挙結果を水戸黄門の印籠のように掲げている。しかし選挙でどんなに多くの支持を集めても自治体の首長にはしていけないこと、できないことがある。それは憲法を無視することである。橋下氏は憲法を尊重擁護しなければならない。それがルールである。ルール違反にはレッドカードを突き付けよう。

第九九条【憲法尊重擁護の義務】
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

我々は主権者である。その意志は主には選挙で行使される。それだけではなく意見や要求があれば、議員にも、自治体首長にもそれを主張することができる。そうすることで民主主義が守られる。4年後には選挙がまたおこなわれる。場合によってはそれより早く選挙があることもある。この選挙でだれにであれ投票した人も、棄権した人もみんな365日主権者であり続けよう。


2011年11月28日月曜日

大阪府・市民は選挙で白紙委任状を橋下徹氏に渡したわけではない これからだ


 11月27日午後8時投票箱の蓋が閉められた途端に橋下・松井両氏の当選確実が出たのには驚いた。出口調査で圧倒的な優位が確認されたのだろう。翌日の新聞を見ると全行政区で両氏が1位を占めている。文字どうりの圧勝といえる。大阪府・市民が維新の会候補を支持したのは明らかであると認めざるをえない。

 前日の26日道頓堀で平松候補の演説を聞いた。多くの聴衆が集まっていた。そのまわりを歩行者が通り過ぎていく。少なくない人が「なんや橋下君と違うのか」といって通り過ぎていく。橋下氏の演説ならぜひ聞きたいというのである。テレビに度々露出する橋本氏の話術・勢いが府市民の支持を集めているのである。みんなが感じている閉塞状況をひょっとしたら打ち壊してくれるのではない思わせているようだ。28日朝のNHKテレビが橋下氏の演説が選挙の帰趨を決めたと報道した。当たっていると思う。

 橋下氏は民意は大阪都・教育基本条例。職員基本条例を支持したと言っているが本当だろうか。大阪都が実現すればなぜみんながハッピーになるのかは誰も知らない。教育基本条例を施行すればなぜ教育がよくなるか誰も知らない。一つ一つの課題の議論はこれからだ。府市民は白紙委任状を彼に渡したわけではない。

 たしかに橋下氏は08年知事選挙、11年の一斉地方選挙、そして今回のダブル選挙と3回勝利した。しかしこれからである。今回の選挙で反独裁の共同行動が前進したこの力は教育基本条例反対の運動につながっていく。そして大阪都構想では、維新の会は大阪府知事と大阪市長の座と大阪府会の過半数を握っているが、大阪市と堺市では少数与党である。とくに政令指定都市堺の市長は橋下氏と一線を画す立場をとっている。4回戦は堺の市長選挙である。06年に政令指定都市になったばかりの堺市をなぜ分割することが市民のためになるのか。二重行政の弊害が具体的にどこにあるのか。それを議論することになる。プロ野球の日本シリーズなら零勝三敗の剣が峰に立った状態だが、それからの逆転優勝の例もある。府知事選挙では維新は堺でも断トツの一位であったが、テーマが堺の解体分割と具体的になればそうはいかない。堺の町衆の底力を見せたい。




2011年11月27日日曜日

韓米FTAに反対する韓国医療従事者と懇談



1119日ソウルで韓米FTAに反対する医療従事者と懇談した。その日はソウル市庁舎前で反対集会があった。その直後に懇談した。参加は韓国保健医療団体連合会の方6名と医学生1名だ。地方から集会参加のためにソウルに来てその夜のうちに帰る人もいた。

彼らが韓米FTAに反対するのはFTAにより韓国の医療が営利化され、医療費が高騰するとともに公的医療保険制度が崩壊させられるからだ。









FTAにおいて「医薬品・医療機器委員会」を設置することが合意された。それにより米国の医療機器輸出に対して規制を加えることが非常に困難になる。医薬品の認可が遅れた場合や薬価が低く抑えられた場合、米国企業が政府に見直しを求めたり、ISDInvestor-State Dispute Settlement条項を利用して世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴されたりすることになる。国が主体的に薬価を決めることが困難になる。その結果、米国医療産業が望む高医療費構造が高額医療の負担が国民に課せられる.


韓国にはすべての国民が加入する公的健康保険制度がある。Non-Violation Complaint条項は米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できるとしている。この条項で、米の民間医療保険会社や営利病院が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。公的保険制度が崩壊しアメリカ型の医療制度にされる危険がある。

1026日の韓国・ソウル市長補欠選挙で、野党系無所属候補の朴元淳氏(パク・ウォンスン=55、当選翌日に市長に就任)が勝利している。勝因は「経済両極化」への市民の不満だった。朴氏は市民運動家で、格差社会をつくった大企業や財閥を強く批判してきた。来年の大統領選挙で李明博政権を倒し再び民主派の大統領をつくろうと意気があがっていた。韓国の民主運動は元気である。
韓国国会は22日、与党ハンナラ党主導で緊急の本会議を開き、米韓自由貿易協定(FTA)の批准法案を野党が反対する中で強行採決、与党などの賛成多数で可決した。これにより韓米FTAが来年1月初めにも発効する。 しかし民主党と民労党など反対派は全面的な「批准同意案無効闘争」を提起し、来年の政権交代を通じ、韓米FTAが無効であることを宣言するとしている。

日本もTPP問題を抱えている。日韓の医療従事者が情報を交換し、励ましあいながら「自由貿易」という名の下でアメリカの対外貿易拡大政策の重要な一環としてアメリカ型の医療を輸出しようとする企てに反対していきたいと思う。

2011年11月13日日曜日

「独裁」を肯定的文脈で使うことができるのか   「独裁経営者」ジョブス・柳井正は称賛されるべき経営者か


橋下徹氏が「今の日本の政治で一番重要なのは独裁。独裁と言われるぐらいの力だ」と公言し、彼の大阪府知事時代の言動に発言を合わせてハシズムの到来の危惧を覚える人がふえている。今回の大阪ダブル選挙では独裁対反独裁がひとつ大きな争点になっている。

そんな時朝日新聞1112日夕刊電子版にのった「〈@ニューヨーク〉5番街に行列を作った2人の経営者」の記事に目を引かれた。

「ニューヨークの目抜き通り「五番街」に10月の同じ朝、長蛇の列が二つできた。一つは59丁目にある米アップルの直営店の前に、もう一つは53丁目に開店した衣料品店(ユニクロ)の前に。」
その二つの会社どちらもカリスマ社長の独裁会社だというのだ。

「米国は元来、最高経営責任者(CEO)の権限が強く、基本はトップダウン型の企業統治が多い。しかしジョブズ氏とアップルとの関係は、もっと個人商店のようなものに思う。」
「このファーストリテイリングも柳井氏の独裁会社だ。極めて強いトップダウン型経営で、かつて自ら選んだ社長を3年で解任したこともある。その代わり機構はシンプルで、経営スピードが速い。」
その二つの企業が「大成功」しているという。天才的な才能をもった経営者が独裁的権限をふるい、自分の感性と創造力を発揮して強烈なトップダウンの経営を行ったことが成功の要因だという。記事は「独裁」を肯定的な文脈で使っている。

しかし企業の成功は何ではかられるのであろうか。一時の企業利益でしょうか。

ジョブス氏は従業員に対して専制的な態度をとったが、消費者に対しても同じではなかったのか。
私はiPhoneiPadも使っているが、どちらもパソコンなしでは使えないものだ。USB接続もできず、SDカードも使えない。Flash Playerも使えない。なぜなのか。ユーザーの声を聴かずにジョブス氏の趣味で製品をつくっていたのではないか。有力なライバルがなかったからヒットしただけではないか。もしもジョブス氏があと10年存命されたとしてもアップルの天下が続いたとは私には思えない。それを確かめたかった。

朝日の記事は続ける
「日米を代表する好調2社が創業者による強烈なトップダウン型であるのは、多くの日本企業の停滞を考えると示唆に富む。とはいえ、日本メーカーに限らず、アップル型をほかに求めるのもほとんど不可能だろう。独裁的な企業統治は可能でも、トップが世界的なヒットを立て続けに出せるセンスをもっている可能性はほとんどないからだ。」
ジョブスや柳井正のような天才が「独裁」をするのはいいが、そんな天才はあまり出ないというのである。本当に天才なら「独裁」をしてもいいのだろうか。

絶対に間違いをしない天才はいるのか。
年をとり肉体的、思考的衰え、そして死を迎えない天才はいるのか。
時とともに環境が移り過去の栄光ある経験が通じない時がこない天才はいるのか。
次代をになう天才を育てることができる独裁者はいるのか。

少なくともみんなが共通して思うのは、ジョブス亡き後のアップルはまもなく凋落するだろうということである。そうなればアップル製品を使ってきた消費者も、出資した株主も、そして従業員も困ることになる。「独裁経営者」は称賛されるべき経営者ではない。

企業経営者でそうである。独裁政治家は論外である。国民の利益にそう、いい独裁政治家などあるわけがない。「独裁」を肯定的文脈で使うのは慎みたい。

2011年11月12日土曜日

反独裁を明確に主張する平松邦夫氏を支持します ためらいを捨て反独裁で力をあわせましょう

13日には大阪市長選挙が告示されます。大阪では府知事選挙も同時に行われてます。このダブル選挙の最大のテーマは独裁政治を明確にめざす橋下維新をストップするか否かです。


橋下氏が独裁をめざしていることは明らかです。本人が「独裁が必要」と明言しています。 今のところ彼は選挙制度を否定していません。逆に知事は選挙「民」に選ばれたことを錦の御旗にして教育委員会も教師も職員も「民」に選ばれた知事の命令に従って動け、命令に従わないものは解雇すると恫喝してきました。さらに少数派の議員の批判に対しては「もっと議席をとってから言え」と居直るのです。そして要求を出す府民には「あなたが政治家になってそういう活動をやってください」「それはじゃあ、国を変えるか、この自己責任を求められる日本から出るしかない」と言ってのけるのです。たしかに知事も府会議員も選挙で府民に選ばれました。しかし選挙では、任期中の全ての政策が明らかにされ、そのすべてに選挙民が賛成して投票できるわけではありません。それどころか一つのキャッチフレーズが投票結果を左右することが多いです。それが現行の民主主義の限界です。だから選挙よって民の信託を受けた自分(達)に、すべてのものは従う義務があると言うような振る舞いするのは間違いです。選挙で選ばれた知事や府議会の多数派は皇帝でもなければ、支配階級でもありません。こんな政治を進める橋下氏は独裁政治の道を進んでいることは明らかです。彼は次は国政に進出すると明言しています。ここでスットップしなければなりません。


平松邦夫氏は反独裁を明確にしています。一切のためらいを捨て平松当選へ力をあわせましょう。立候補を辞退された渡司孝一氏の英断を高く評価します。たしかに平松氏の四年間の市政に賛成できないところは少なからずあります。しかし独裁に反対し民主主義をまもる点で一致します。今の局面ではこれが最優先課題です。


ヒットラーも最初は選挙で選ばれました。下品で無教養な男に何ができるかとの油断が足下をすくいました。まだ大丈夫との楽観が手遅れにしました。歴史の教訓に学ばなけばなりません。ハシズムノーを合い言葉に思想信条の違いを越えて力を合わせましょう。

2011年11月11日金曜日

「実行力のある橋下さんの方がましだ」と思う君へ


毎日の仕事ごくろうさん。大阪知事・市長選挙が始まっているね。おじさんはこの選挙は大阪だけでなく日本の未来を左右する選挙だと思います。ぜひ自分の頭でよく考えて投票してほしいと思います。君のお母さんに聞いたのですが、君は「橋下さんの方がわかりやすいし、実行力がある。橋下さんの方がましだ。」と考えているようですね。選挙は自分の判断で参加するものですから、だれを支持しても構わないのですが。もう一度よく考えて選択してほしいと思います。

橋下さんは「今までの日本の体制で利益を受け、このままずっと今のやり方でやりたいという勢力との戦いだ」と演説しました。なるほどわかりやすいですね。大阪のほとんどの人は「今までの日本の体制で利益」を受けていません。だから何とかいい方向に変わってほしいと思っています。でも橋下さんは、サラ金の御用弁護士として弱い者いじめをして数億円の年収を稼いでいた弁護士です。「今までの日本の体制で利益」を得ていた一人です。橋下さんは「どうして君は友だちがいないのか」(河出書房新社)でドラえもんにでてくるスネ夫のように強い者の下でずるがしこく生きることをすすめています。強者のパシリになれというものです。つらい目にあってきた人を救いたいとは思っていません。自分は今までやり方以上にもっとうまくやって利益を得たいと考えているのです。
そして一番問題なのは「今のやり方」を変えてどんなやりかたで、そして何をするかが問題です。いったん選挙で選ばれた首長は独裁的な権限で政策を実行できるようにしようというのです。府の権限に及ばない大阪市はつぶしてしまえ。議員数も減らしていろんな意見を持つ議員が選ばれる可能性を狭めてしまえ、政治から独立した制度になっている教育委員会も解体してしまえというのです。そして強い権限で高速道路の建設・関空へのリニア鉄道を引きたい。カジノも誘致したいと金利上限規制のないサラ金特区をつくりたいというのです。これはこれまでやってきた大型公共事業の継続です。そんなことをすれば、またまた赤字をだし大阪府・市の財政が破たんすることは明らかです。また現行法の縛りを突破しなければ実行することはできません。一時期かれは紳介のパシリでした。今は誰のパシリなのでしょうか。大型公共事業を期待する関西財界か、サラ金特区を期待する貸金業界か、カジノ建設を望む暴力団か、教育の政治支配をめざす右翼勢力か。

 橋下さんの「実行力」はどれほどのものでしょう。実行力を計るには、前に公約したことがどれだけ実現できているかをみればよくわかります。07年の知事選挙で橋下さんがどんな公約をしたか覚えていますか。
こんなものでした。「『おおさか』を笑顔にするプラン 子どもが笑う、大人も笑う大阪に」です。
 なんか笑ってしまいますね。この4年で大阪の笑顔が増えたとはだれも思いません。口のうまい橋下さんでも笑顔が増えたと強弁するのはなかなか難しいでしよう。17の重点事業を公約にあげていました。大阪府の採点でも「出産・子育てアドバイサー制度」「妊婦一般健康診査の受診回数を拡大する」「乳幼児医療助成を拡充」「駅前・駅中に保育施設を整備」「子どものいる若い夫婦への家賃補助制度を創設」に具体的取り組みを実施していないと×がついています。たいした「実行力」です。これでは大阪に笑顔が増えるわけはありません。人を攻撃するのは上手いですが、自分のしたことには反省の言葉は出てきません。
 橋下さんは高校の授業料を無償化したと評価する人がいます。それは誤解です。知事就任当初、逆に私学への助成を削減しようとしていたのです。0710月知事が高校生と私学への助成金削減プランをめぐり意見交換会を行いました。その場で知事はこういってのけました。「今の世の中は、自己責任がまず原則ですよ。誰も救ってくれない」「皆さんが完全に保護されるのは義務教育まで。高校になったらもう、そこから壁が始まってくる。それが世の中の仕組み。」「それはじゃあ、国を変えるか、この自己責任を求められる日本から出るしかない」です。しかし10年より大阪府の高校授業料無償化が実現しました。それは府民の要求運動が実現したものです。知事は仕方なく同意しただけです。弱肉強食の競争論理は君が一番嫌う考え方でしょう。
 橋下さんは3年間大阪府を黒字にしたといっています。しかし実際は府の借金は年々増えています。どうしてそうなるのでしょう。それは臨時歳入財政対策費という借金を収入に計上しているから見かけ上黒字になっているのです。粉飾決算の一種と言えます。少なくとも黒字を出したと自慢できるものではありません。まるで今話題になっているオリンパスみたいです。
一方選挙では公約もしてない、大阪都構想・WTCへの大阪府庁移転・教育基本条例には血道をあげました。その結果WTC府庁移転では防災対策の不備のため、200億を超える大きな損失を出しています。これが相手候補のしたことなら橋下さんはどれだけ口汚くののしることでしょう。
好きな人に告白ができない実行力のない人は嫌です。でも望まないことをしつこく続けるストーカーのような「実行力」のある人はもっと嫌です。
私たちに笑顔を取り戻すには、破たんがあきらかな大型公共事業ではなく、医療・福祉・教育に重点的に税をまわし府民の生活を底支えすることです。それにより雇用も増えます。今までと違う大阪・日本をつくりたいです。ワンフレーズに幻惑されず、よく調べてよく考えて投票してください。


2011年11月6日日曜日

またまたとんでも発言 枝野経産相      国内は脱原発、でも輸出は推進 「矛盾せぬ」


116日付の朝日新聞によると枝野幸男経済産業相は5日、早稲田大学で行った講演で次のように語った。

「リスクをどの程度重視するかは国によって違う。地震や津波がない国もあるが、日本は圧倒的に原子力を使うには適さない」
「わが国がいま持っている技術について海外の評価にこたえるのは、むしろ国際的な責任だ」
「(原発)技術を国内で使わなくなるかもしれないが、(外国が)評価するなら、それにこたえることは矛盾でない」
国内は脱原発・海外には原発輸出推進が矛盾しないと言うのである。

これは今年312日福島第一原発一号機ベント後に、彼が述べた「放出はただちに健康に影響をおよぼすものではない」に匹敵する歴史に残るトンデモ発言である。

国内は脱原発・海外には原発輸出推進がなぜ矛盾しないのだろうか。
日本は地震や津波が頻発するので原子力を使うのに適さないが、(危なかろうが危なくなかろうが)日本の原発を買う国があればうまく話をつけて売ればいいというのである。矛盾でなければ、不正義である。

まず知りたいのは、本当に日本は脱原発をすべきと枝野氏が考えているのかと言う点である。枝野氏が真に脱原発論者であれば、それはそれで歓迎するが、疑念が残る。脱原発への国民の意思が強いための仮の方便ではないのか。この点については今後の枝野氏の発言・行動で明らかになってくる。

枝野氏は外国には地震や津波のない国もある。その国が、日本の原発を買ってくれるならそれはそれでいいと言う。「日本の官民はベトナムやトルコ、ヨルダンなどへの輸出を目指し、交渉している。」(朝日新聞)ベトナムやトルコ、ヨルダンのどの国が地震や津波のない国であるのか。世界の地震地図を見てほしい。
 
地震分布の世界地図[ 出典Earthquake Search  USGS - U.S. Geological Survey 

相手の国が買おうというのだから売ればいいというは間違っている。かつて日本はアスベストが問題になれば工場を韓国に移転した。また水俣病を経験しながら水銀輸出禁止の要望がある中で、アジアで唯一水銀輸出を現在も継続している。福島を経験した日本が原発を輸出することで、またもやエコノミックアニマルという蔑称を受けたいのか。

福島原発の事故があっても原発を輸入したいという外国政府があることは事実であろう。日本がするべきことは原発事故の事実を国内外に明らかにすることである。またある特定の外国政府が原発輸入の意思を示しても、政策決定にその国の国民の意思が反映されているかと言う問題がある。日本政府がベトナムやトルコ、ヨルダンなどへ原発を輸出の働きかけをするというのであれば、脱原発を望む日本国民はベトナムやトルコ、ヨルダンなどの国民に原発の危険性について伝える必要がある。


2011年11月2日水曜日

今年はどんぐりの不作の年 これがクマ騒ぎの原因


今年はどんぐりが不作のようだ。正確に言えばコナラ(コナラ属)のどんぐりがほとんど見られない。しかしアベマキ(コナラ属)やクヌギ(コナラ属)には例年どおりどんぐりがある。コナラのどんぐりの不作は堺だけでなく河内長野でも同じだ。一本の木や一つの森だけではなく大阪南部全体が不作である。

こんな話を友人から聞いた。ちょうどその頃北海道で人里に熊が出没するとのニュースがマスコミを賑わせていた。きっとこれはどんぐりの不作と関係があると思った。そこでメールで北大の植物園に問い合わせてみた。

北大植物園からは「北海道でも、今年はドングリなどの山の果実が凶作となっているようで、ヒグマ の出没のニュースが毎日のようにされています。不作なのは全国的なもののよう ですね。本園でもドングリの類は不作となっています。」との返事が来た。大阪だけではなく北海道でも不作のようだ。

盛口満「どんぐりの謎」(ちくま文庫)によると、
 コナラには、”成り年”があるのである
コナラの成り年には、近くの雑木林は足の踏み場もないほどドングリで敷きつめられ、学校の冷蔵庫もどんぐりで一杯になる。でも不作年になると、どんぐりはまったくといっていいほど落ちていない。
ミズナラでも豊作・不作がある
(マテバシイは)毎年、安定した供給をもたらしてくれていた。
成り年は地域ごとにいっせいに起こる現象なのだ

おなじどんぐりでもコナラ・ミズナラには豊作・不作があり、マテバシイにはないようだ。成り年は地域ごとに起こるようだ。ことしは少なくとも大阪南部と北海道で同時に起こっている。日本全国で同時におこっているのかもしれない。

どういうメカニズムで豊作・不作がおこるのか不明である。盛口は木の休息による体力回復説、どんぐりを減らすことによりどんぐりを食害する動物たちの個体数を減らす時間的逃避説を紹介している。

北海道環境科学研究センター 主任研究員 間野 勉は「ヒグマ捕獲数の増加を読み解く」 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/grp/02/higuma_esa.pdf で次のように書いている。
北米のアメリカクロクマでは,クマの主要な秋の食物であるブナやナラ類の堅果の豊凶が,クマが人里に出没して人間と軋轢を起こす頻度に影響することが知られています.北海道でも,例えば渡島半島地域では,ブナ,ミズナラ堅果が少ない年に秋季のヒグマ捕獲数が多くなることが,道立林業試験場と環境科学研究センターの共同研究によって明らかになっており(今ほか,2005),堅果の豊凶が秋季の人里へのヒグマの出没頻度に影響していると考えられます

 今年はどんぐりの不作の年これが北海道のクマ騒ぎに関係しているのは間違いない。クマの射殺という残念な結果になっている。どんぐりの不作の原因の解明と適切なクマの食料の確保対策が必要だ。
  

クヌギのどんぐりはある

コナラにはどんぐりがみつからない