日本老年医学会は1 月28 日、「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」2012(「立場表明2012」)を決定しました。高齢者の医療とケアに関する重要な提起です。多くの国民が一読され議論をされることをお勧めします。
概略、以下のようです。
■基本的立場
高齢者医療は、人文・社会・自然科学で得られた幅広い成果に基づく生命科学を基盤にした、「生命倫理」を重視した全人的医療であるべきである。
■「立場表明」を出す目的
すべての人は、「死」を迎える際に、個々の価値観や思想・信条・信仰を十分に尊重した「最善の医療およびケア」を受ける権利を有する。
■立場−1 年齢による差別(エイジズム)に反対する
いかなる要介護状態や認知症であっても、高齢者には、本人にとって「最善の医療およびケア」を受ける権利がある。
■立場—2 個と文化を尊重する医療およびケアがおこなわなければならない。
■立場—3 本人の満足を物差しに高齢者の終末期の医療およびケアにおいては、苦痛の緩和とQOL の維持・向上に最大限の配慮がなされるべきである
■立場—4 家族もケアの対象に含まれる。
■立場—5 医学のみならず看護、介護、リハなどのチームによる医療とケアが必須
■立場—6 医療とケアの従事者並びに国民に死の教育ならびに終末期医療およびケアについての実践的な教育啓蒙が必要
■立場—7 医療機関や施設での継続的な議論が必要 倫理委員会を設置すべきである。
■立場—8 科学の不断の進歩を反映させる努力・研究が必要
■立場—9 緩和医療およびケアの普及
■立場—10 医療・福祉制度のさらなる拡充を 制度的・経済的支援が不可欠である。
■立場—11 科学的検証を進めるとともに、広く国民もまじえた議論を続ける。
しかし現実の高齢者の医療とケアをめぐる状況は必ずしも「立場表明2012」の方向へは進んでいません。「増大する医療費を抑制するための早期退院への圧力はますます強まっており、高齢患者やその家族の意思を十分に確認することなく治療方針が決定される傾向」(「立場表明2012」)があります。国の財政困難を理由に高齢者の公的医療が縮小されています。高齢者と若者の利害を対立させ「若者のために高齢者は我慢するべきだ」との言説が横行しています。批判し克服しなければなりません。
多くの方がこれを一読されることを期待します。
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