舞台は松本。勤務5年目の青年内科医・栗原一止(櫻井 翔)は、医師が不足しながらも「24時間、365日対応」で大勢の患者を抱える本庄病院に勤めている。その病院での激務。どこの第一線病院でも見られる光景が繰り広げられる。一止は医師としてこのままのここで仕事を続けていていいのか、それとも「良い医者」になる為に最先端医療が学べる大学医局に戻るのがいいのか悩む。そんな時、彼の前に大学病院から「あとは好きなことをして過ごして下さい」と言われた末期ガン患者・安曇雪乃(加賀まりこ)が現れた。治らない病気を治すのも医師の仕事だが、治らない病気で死んでいく患者に寄り添うのも医師の仕事だ。医師としてどんな生き方をするのかそれをテーマに物語は進む。
安曇さんは「でも、最後の最後にこんな幸せな時間が待っていたなんて、本当に人生というものはわからないものです」と言われた。この言葉にすべては言い尽くされている。死に臨んで感謝の心をこめて幸せだと言えるようになる。「ありがとう」と逝くものも残るものも言えるようになる。その手伝いができる仕事は素晴らしい。実際はそのような場面は少ない。
安曇さんを演じた加賀まり子は非常によかった。若いころの加賀まり子のイメージも鮮明に残っているからこそ余計にいい年寄りになったと思える。私よりすこし年上だが単身で死を目前にした高齢者の苦しみと悟りをうまく演じていた。いま「老い」本が数多く出版されているがこの映画をぜひ見てほしい。安曇さんのように逝きたいと多くの人が思うだろう。
私の年になるともちろん医師としての将来に迷いはない。残りの医師人生がどれだけあるかはわからないが、一止が安曇さんにしたように患者さんに寄り添いたい。
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