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2012年10月28日日曜日

計画停電計画は二度と出されてはならない 2012年夏関西電力計画停電計画についての草の根総括


暑い夏がようやく終わったらもう晩秋だ。季節の移り変わりは早い。
622日関西電力株式会社から「万が一の備えとしての計画停電」計画が発表された。もし実施されれば患者のいのちに関わる事態が発生する可能性があり、この夏緊張した日々を送った。97日関電が「この夏の節電期間の終了」を宣言し、計画停電は実施されずに終了した。結果的には「大飯原発の供給力がなくても、電力使用率が100%を超え、計画停電が必要になったと考えられる日数はゼロ。関電が緊急節電を呼びかける基準とした97%超も1日だけだった。」(10月1日朝日新聞)大飯原発再稼働も、計画停電計画も必要なかったことになる。

人工呼吸の患者やクーラーがないと熱中症になる方など電力がないと生命が維持できない人がいる。これらの人は停電弱者と言える。実施されなかったといえ関電が準備した計画は、個々の住民の事情を無視して地域を指定して一律に停電を実施し停電弱者の生命を危機にさらす非人道的なものであった。2012年夏の関西電力計画停電計画について、事実を記録し二度とこのような計画が出されることがないようにしたい。


1、計画停電計画は民主的な議論なしで決定された
その発端は、5月18日電力需給に関する検討会合エネルギー・環境会議であった。そこで「セーフティネットとしての計画停電の準備」をすることが決められた。
「計画停電は実施しないことが原則であるが、大規模な電源の脱落等万が一に備えて、(中略)計画停電の準備を進めておく」とで協議され確認された。
国会で電力需給見通しの妥当性や計画停電計画そのものの適法性について審議されなかった。


2、計画停電は人命尊重を第一に計画されたか
電力需給に関する検討会合エネルギー・環境会議は計画停電に実施の留意点として次の点を指摘した。
「併せて、国民生活への悪影響を緩和するため、医療機関等の緊急かつ直接的に人命に関わる施設や国の安全保障上極めて重要な施設等については、変電所の運用改善等によって技術的に可能な範囲で停電による影響をできる限り緩和する」

事実、救急病院のある地域は計画停電から除外された。しかしそれ以外の医療機関は計画停電の対象となった。金融機関も対象外になったようだ。しかしどの地域がどんな理由で対象地域から除外されたか説明されていない。

自宅で人工呼吸器をつけている患者さんの居住する地域が計画停電の対象地域になったので、関電に対象地域から除外してほしいと関電に電話で申し入れたが、「皆さん平等にしているのでダメだと断られた」。電気供給がなしには生きていけない患者さんの電気を、健常な人のそれと「平等」に停電するのは正当ではないどの地域であれ停電弱者はいる。一つの地域を計画停電にすれば、停電弱者は危機に陥ることになる。それは無差別爆撃と同じ無差別停電である。個々の住民の状況を無視した地域一律の計画停電は非人道的である。

3、停電弱者への対策はされたのか
電力需給に関する検討会合エネルギー・環境会議は計画停電の実施にあたり「在宅で人工呼吸器等の医療機器を使用する患者への対策の徹底、熱中症対策の周知徹底等に取り組む」とした。しかし実際はどうであったか。

先に述べた患者さんの場合、計画停電実施時関電は自家発電機を設置し電気を供給していただくことになった。自家発電機では電圧の変動がありクーラーが故障する可能性があることがわかった。体温調節機能に障害がある患者さんは停電すれば自家発電機があってもクーラーが動かず生活できないことがわかった。結局、計画停電が実施されれば入院してもらうことにした。

停電でクーラーが停止することは大問題である。クーラーのない暑熱環境で生命の危機に陥る方は少なくない。しかしこの対する具体的な対策は関電からも、国・地方自治体からもされなかった。

電気がなければ生命の危険がある患者さんは在宅人工呼吸の患者さんだけではない。在宅療養をしている患者さんは様々な医療器械を使用している。酸素濃縮器、喀痰吸引器、電動ベッド、エアーマット、移動用リフターなどである。

酸素濃縮器は停電になれば動かない。電気不要な酸素ボンベに変更する必要がある。計画停電が予想される時には、前もって酸素機器の会社が酸素ボンベを配置することになったが。停電実施時に酸素濃縮器から酸素ボンベに誰が変更する作業をするのかが問題になった。患者さん本人やご家族がそれを実行する能力があるかが検討課題になった。停電実施時に医療機関から電話で変更状況を確認するだけでいいのか。本人・家族実行能力がないと評価すれば、臨時で医療機関や介護機関から訪問して実行・確認することにした。

吸引器にバッテリーのないタイプがあった。今後停電は様々な理由で起こる可能性がある。吸引器はバッテリーをバッテリー付きのものに変更しなければならないが実施できていない。

停電弱者に対する対策はほとんどなされなかった。医療機関の努力だけでは危機は回避できなかったといえる。


3、電力不足時の対策はどうすればいいのか

自然災害などの突発事故で発電・送電が停止することは十分に考えられる。その場合は停電弱者の救援を最優先にしなければならない。しかし電力の供給不足で電力供給を制限しなければならない時にどういう方法で電力供給をコントロールするかである。先に述べたように一定の地域を計画的に停電させては非常に危険である。停電を回避し電力弱者を守るために、すべての自家発電機のフル稼働とすべての地域で強力な節電を呼びかけ実施する以外に方法はない。緊急自家発電と緊急節電のポテンシャルの評価を行う必要がある。


4、最後に
政府と電力会社は電力を供給する義務がある。

憲法第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

電気事業法第18条 一般電気事業者は、正当な理由がなければ、その供給区域における一般の需要(事業開始地点における需要及び特定規模需要を除く。)に応ずる電気の供給を拒んではならない。

停電を実施すれば危機に陥る可能性がある停電弱者がいるのに計画的に電気を停めるのは生存権の侵害である。
無差別の計画停電は憲法と法に違反する。

電力不足を回避するために、省電力社会の推進と再生可能エネルギーよる発電を推進しなければならない。再び「計画停電」計画は出されてはならない。

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