Translate

2011年6月12日日曜日

原発事故と健康についての民主的自主的かつ科学的議論を

報道によると国立がんセンターは6月22日、現在の放射線の影響が「安全という立場」「危険という立場」の識者を同センターに招き,エビデンスに基づいた医学的公開討論会を実施する。同センター理事長の嘉山市は「エビデンスは1つ。どこまで分かる,どこまで分からないのかをはっきりさせ,そのデータを福島の例にどれだけ役に立てられるかを議論したい」とのべている。公開討論会の成功を大いに期待する。
放射線の人体への影響、とくに長期低線量被曝が人体にどのような影響をおよぼすかについて事実と根拠にもとづいて議論する必要がある。100mSVにしきい値があってそれ以下なら安全といえるのか。議論を大いにしていただきたい。検討すべき健康影響は発がんだけなのかそれ以外の妊娠異常や内分泌・循環器・神経精神その他の異常についての報告もある。その点での検討も必要だ。
38億年間生物が自然の放射線にさらされて生き抜いてきたことは事実だが、人類の文明が始まって以降、大量の放射線が多数に浴びせられるようになったのはアメリカの原爆開発以降の65年である。その間、広島・長崎をはじめ各地の原爆実験場、スイーマイル・チェルノブイリ・福島などの原発事故で多くの人が被曝してきた。しかし長期低線量被曝の人体影響についての定説がいまだ確立していない。
それはまだ発がんが数十年の経過でおこるためまだデータが少ないことがひとつの要因である。しかしそれだけではなく被曝者の個々の被曝線量と健康状態を把握した科学的研究がないこと。また健康調査のデータが公開されて、すべての研究者が入手できる状態になっていないことも原因だ。
そして議論を複雑にしているのが、核兵器と原発を保持し続けたいという一部の国家の意思があることだ。その立場から放射線の影響を少なく評価したいというベクトルが働いている。原発の安全を確保するべき原子力保安院が推進する通商産業省のもとにあることが批判されているが、国際機関であるIAEAICRPも同様の危険がある。
今回の福島第一原発事故の被曝者については長期に渡る健康管理の徹底をはかるとともに個々の被曝量・健康状態のフォローを行う必要がある。それが日本の医師の人類の未来に対する使命と考える。
「私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。」(ヒポクラテスの誓い)

0 件のコメント:

コメントを投稿