朝日新聞 11・01・15朝刊
菅首相の14日の記者会見で消費税増税を進める決意が固いことがよくわかった。国民は納得させるためのレトリックもよくわかった。
菅首相は「現在の消費税を国税分については、高齢者の医療・介護・年金に振り向けるという、そうした税制の基本的考え方が平成11年に決まっております」
たしかに平成11 年度予算以降、国分を基礎年金・高齢者医療・介護の3経費に充てることを毎年度の予算総則に明記されている。人のよい一般庶民は「そうか消費税は社会保障に使ってくれていいたのか」と思ってしまう。しかし消費税は使い道の決まった特定財源であったことは一度もない。消費税は一般財源である。法人税歳入が減少するなか消費税歳入がその穴を埋める形になっていることは事実である。
菅首相は続ける。「けれども、平成11年においては、約7兆円が消費税の国税分でありました。国の歳入分でありました。必要な費用は約8兆5,000億程度でありました。ですから、確かに高齢者の医療・介護・年金について、消費税の国税分でほぼ賄えてきたわけですが、平成22年においては、収入は7兆円が変わらないのに対して17兆円の支出を既にしているわけです。」消費税歳入が不足していると言う。だから消費税を上げる足りない分を払ってもらう必要があると示唆する。国民に「そうか消費税歳入が不足しているのか。税率引き上げもしかたがない。」と思わせようとしている。
たしかに国民の中には社会保障に使われるなら消費税率引き上げもしかたがないという考えがある。それは社会保障を充実して欲しいとの願いから出ている。しかし民主党政権は自公政権の政策を引き継いで医療・介護・年金の給付制限・給付内容の切り下げを行っている。公約した後期高齢者医療制度の廃止も実行していない。社会保障切り捨て政策を継続したまま社会保障のために消費税率引き上げると言われて納得出来るものではない。とくに一方で法人税率低さげを行いながらの消費税率引き下げである。真の目的は社会保障充実のためではなく法人税率引き下げのためであると言われてもしかたがない。
菅首相が10兆円の消費税歳入不足という言い方をしていることは見逃せない。「では、その差額の10兆円はどうしているかと言えば、それは実質的には赤字国債で、借金で埋めているわけであります。」まるで国民が払うべき税金を払わなかったことが財政赤字の原因のようだ。かりに消費税が平成11年から社会保障に使われてきたとしても、高齢者の医療・介護・年金は消費税だけで賄うべきであると決めたことは一度もない。そんなことを国民は了解していない。税金は消費税だけではなく所得税も法人税も揮発油税も酒税もたばこ税も払っている。それらをふくめて国の歳入である。国税全体の使い道を改めて、社会保障に重点的にまわして欲しいと考えている。社会保障には消費税以外は使わせないというのが「福祉目的税」であるならそれは「福祉制限税」である。
菅首相の論理では消費税歳入を7億から17億にするには税率を5%から12.5%に引き上げることになる。そうなれば社会保障の名のもとに社会保障が守るべき国民生活を破壊することになる。菅首相の消費税財源不足論は間違っている。
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