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2011年7月14日木曜日

熱中症予防と塩分とNHKためしてガッテン

7月12日のNHKためしてガッテン「血液からツヨクなる!熱中症で死ぬもんかSP」は興味ぶかい内容であった。これまで放送した熱中症予防と塩分摂取の問題をより正確に説明された。以前の放送内容を適宜、修正・発展させる番組作りの姿勢は好ましいものである。しかし、熱中症の患者さんを診ている臨床医からすると、番組の内容はまだ不十分であった。

番組はこう述べた。

熱中症予防のための塩分補給の必要性が一般常識になりつつあるが、去年から今年、あふれる熱中症対策情報の中で、「塩分補給が大切」というフレーズだけが一人歩きして、「大量の汗をかくときは」という大事なひと言が抜けてしまっていた1.暑い環境で日常生活 2.屋外で激しい運動の二つの場合を区別する必要がある。後者の場合汗で失う塩分量は、ケタ違いに運動の場合の方が多い。これは、大量の汗をかく場合には、汗腺における塩分の再吸収が追いつかないためだ。この場合は、塩分補給をしっかり意識するべきである。一方、日常生活でジワジワと汗をかく場合は塩分の喪失は多くなく、また私たち日本人は、塩分に関しては必要量をはるかに上回る量をふだんの食事で摂摂しているので塩分摂取を考慮する必要がない。つまり、塩分補給をしっかり意識すべきなのは、「大量の汗をかく場合」である。

たしかに熱中症予防で塩分摂取を一面的に強調することは危険がある。高血圧や心臓病・腎臓病を合併している方で日常から塩分制限の指導を受けている方も多い。その方が熱中症予防のために塩分を多く摂るのは危険である。その人の基礎疾患に合わせて考える必要がある。

しかし問題は日常生活でジワジワと汗をかく場合は塩分を補給する必要がないと言い切るのは早計である。日常診療ではジワジワと汗をかいて発症した患者さんの中に低張性(塩分欠乏性)脱水の熱中症の方が少なからずいる。それは食欲不振のため食事をとれていないからである。食事を摂れていれば重ねて塩分を摂取する必要がない。しかし食欲不振で食事から塩分が摂れなくなる方がいる。その方が、塩分の含まない水だけを補給していると低張性(塩分欠乏性)脱水になる。

だから日常生活でジワジワと汗をかく場合は、いつものように食事をとることと水分を補給することを強調することが大切である。食事は水分と塩分の供給源である。それができれば塩分を補給する必要はない。しかし食事摂取量が落ちた場合は水分と共に塩分補給を考慮する必要がある。また食事が摂れなくなった場合は当然医療機関に受診する必要がある。ためしてガッテン担当者にこの点を補強して頂くことを要望する。

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