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2009年10月17日土曜日

安部彩著「子どもの貧困」を読んで

「子どもの貧困-日本の不公平を考える」(安倍彩 岩波新書)を興味深く読みました。
ぜひ多くの人が読まれることをお勧めします。


この本は日本の貧困はOECD諸国の中でワースト2位であるという事実を、データをもとに実証的に提示しています。
その貧困は子供のなかに健康、学力、そして大人になってまで続く格差になっています。
この現実を自己責任で乗り越えろと切って捨ててはいけません。
貧困の世代間連鎖を断たなければならないと大多数の国民が考えていることでしょう。


本の中で私が衝撃を受けたのは、「子どもの必需品に対する社会的支持の弱さ」との安倍の指摘です。


安倍は08年にインターネットを通じて「現在の日本の社会においてすべての子どもに与えられるべきものにはどんなものがあると思いますか」を、20才代から80才代までの一般市民1800人に問いました。
調査は、「12歳のこどもが普通の生活をするために、○○は必要だと思いますか」と問いかけ、「希望する子どもには絶対に与えるべき」「与えられたほうが望ましいが、家の事情(金銭的など)で与えられなくてもしかたがない」「与えれられなくてもよい」「わからない」から選択するものです。


結果はイギリスと比較して必需品に対する支持が低いものでした。
例えば「お古でない靴」イギリスでは94%が必要としてるが、日本では40%です。


私がとくに驚いたのは、「朝ごはん」「医者に行く」「歯医者に行く」ことが絶対に与えるべきとする人がそれぞれ 91.8%,86.8%,86.1%であった事実です。
たしかに圧倒的多数の人はこれら三つの事項は絶対に与えるべきと考えていますが、10%前後の人は必ずしも与える必要はないと考えているという結果です。


たしかに90%の人が絶対に与えるべきあるとしたことは、日本の国柄を定めた日本国憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」が日本社会にたしかに根ざしていることを示しています。


でも10%の人はそうは考えないという結果は衝撃です。
個人の意見は自由です。
義務教育は受けられなくても仕方がないとする人は限りなくゼロに近いでしょう。
でも現在の日本で朝ごはんが食べれず、病気になっても医者にかかれない人がでてもしかたがないと考える人が10%もいるのです。そんな達はどんな人なのか非常に興味があります。富裕層に近い人かもしれません。
案外貧困層の人かもしれません。
そんな人たちは自分や自分の子や孫がそんな状況になってもしかたがないとするのでしょうか。
著者の今後の掘り下げを期待します。


この本を読んで私は日本の貧困の現実は必ず解決しなければならない、そのためにも各人が生活と労働の現場から声を上げる必要があることを痛感しました。
そうしなければ、「これでいいんだ」「しかたがない」とする人を変えることはできないと思いました。


私は幸せをもとめます。しかし自分も「しかたがないと」と切り捨てられる可能性がある中では、幸せを味わうことはできません。私は人の不幸の上になりたつ幸せなら拒否します。

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