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2009年10月17日土曜日

被爆者医療ひとすじに 被爆医師小林栄一の戦後史  清風堂書店刊


小林栄一医師とは
先生は大阪市此花区にある此花診療所に58年間勤務され、医師として被爆者として、被爆者に寄り添いながら診察して来られました。これまでのべ5000人の被爆者を診察し、82歳の現在も被爆者全員救済の道を目指し被爆者医療に奮闘されています。43年長崎医専に入学し、45年8月9日爆心から700mにあった長崎医専校内で被爆されています。教職員、学生の死者は890余名あったとのことです。文字どおり生死を分けた一瞬を体験されています。この本はその被爆医師小林栄一氏の戦後史を綴ったものです。

原爆症に対する考え方
先生の被爆者医療に対するスタンスは、「広島・長崎の被爆者が人類の歴史上核兵器による最初の犠牲者であること。従って、被爆者の示す病的な状態はそれが明らかに原爆と無関係であることが証明されぬ限り、すべて、原爆に直接的、副次的に関係する可能性があると考えて対処しなければならない」です。
「がんの増加、貧血、白血病、熱傷・外傷などのケロイド、肝臓障害、原爆ぶらぶら病などいろいろな疾病で苦しんでいる」被爆者に医療的な支援をするとともに、公的な救済・被爆者認定を要求して運動を進めてこられました。「がん患者の増加を考えると、高齢化した被爆者の全身管理が必要となります。」と述べられています。
そしてこのような活動を通じて医学的にも被爆被害の実相を明らかにすることが核兵器廃絶の推進力になると考えておられます。

医師としての責任
この本では、被爆医療における医師の役割について繰り返し触れられています。
「また原爆と関係あるのだろうかとの患者の質問に対して、原爆のことは知らないとか、40年もたっているのだから原爆の影響などまったくない筈だとか、被爆者の心を理解しない返答が多い」「この際必要な医者の診断書についても、こんな面倒な診断書は書けない、書き方がわからないと断わったり、また折角書いても、要領が悪いために却下になったりする例も多く、そのために不信感を抱かせている。」「原爆に対して興味がない、被爆者はいろいろ難しいことがあるので御免だと、医者から拒否されている数々の例」があると指摘しています。
日本の医師が原爆放射線被害の実相についての知らないのは恥ずかしいことです。この本を読めば知識を身につけることができます。また被爆者から求められる各種診断書の書き方も詳述されています。
大阪には被爆者が892名(07年度末)おられます。広島・長崎・福岡に次ぐ全国4位です。大阪の医師がこの本を読まれ、先生の後継者とまではいかなくとも被爆医療の初療医になられることを期待します。

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