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2009年10月17日土曜日

朗読者・愛を読む人

戦争犯罪にかかわった女性の不幸とその女性を愛した男性の苦悩を描いたものです。

あらすじはあえて述べません。
ネット上でいくつもの紹介があります。
小説も映画もぜひ自らが味わわれることをおすすめします。

テーマは、年の差のある男女の恋愛、ナチスの虐殺への加担、そして読字障害です

年上の女性を愛した男性がその女性が突然失踪し彼女に捨てられた、自分もまた彼女を傷つけたとの思いを人生を通じて引きずりながら生きてきます。

彼女は文字が読めなかったのですが、彼が刑務所に送り続けた朗読テープを聞くことをきっかけに学習・訓練し読字障害を克服します。
その後、彼女から彼に対して手紙を繰り返し出しますが、彼女が熱望する彼からの返事はありません。
釈放の直前に彼が面会に来ますが、抱擁も口づけもありません。
彼は戦争犯罪を犯した彼女を身近な存在としては受け入れることができなかったのです。
心の中には彼女が常にいるのですが現実の彼女を全面的に受け入れることができません。
そして釈放の前夜、彼女は自ら命を絶ちます。

彼女のかっての仕事はナチス強制収容所の看守です。
アウシュビッツへ送る捕虜の選別をする任務を果たしました。
戦争を遂行した権力者ではなく、一般市民が戦争犯罪に加担していく悲しい過程です。
裁判で彼女は繰り返し「あなただったら何をしましたか?」と問い返します。
私たちはあの状況で自分ならどうしたかを常に問いかける必要があります。
作者は戦争犯罪を告発する運動に対して主人公の男性に「ぼくは当時、他の学生たちが自分を両親から切り離し、それによって犯罪者・傍観者・目をそらした者・許容者や受容者の世代から自分を切り離して、恥の感情とは言わないまでも、恥じることの苦しみを克服してしまえるのをうらやましく思ったものだった」と語らせています。
戦争犯罪を自分とは無関係のものとして断罪するのではなく、自分もひょっとしたらそのような状況に追い込まれるのではないかのと考える想像力が必要です。
私は一般市民が究極の状態に追い込まれないように戦争と虐殺の事態を回避する活動を、今この時点で進める必要があると考えます。

主人公の女性は読字障害でした。
そのために裁判でも自らを不利な状況に追い込んでいきます。
彼女にとって読字障害を他人に知られることは戦争犯罪者として重罰を受けることより耐えがたいことでした。
読字障害は学習障害の1つです。
基本的に全般的な知能発達に遅れはないが、読む能力の習得と使用に著しい困難を示すな障害です。
欧米では人口の5~10%(アメリカで2500万人、ドイツ400万人、日本600万人)が何らかの読字障害を抱えていると言われています。
著名人では俳優のトムクルーズやアンソニー・ホプキンスが識字障害を公言しています。
適切な教育・訓練で克服の可能性があります。
この障害で不幸な人生を送る人を出さないために、早期診断と療育が必要です。

久しぶりに面白い作品に出会いました。繰り返し味わいたいと思います。

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