報道によると、厚生労働省と文部科学省の検討会が医師臨床研修制度についてを改定する提言をまとめました。必修の診療科目を大幅に減らし、2年の研修期間を実質1年に短縮できるよう見直す内容です。現在は、内科、救急、地域保健・医療、外科、産婦人科、小児科、精神科の7診療科が必修となっています。それを、必修は内科、救急、地域医療の3科に減すというものです。2年目から、将来専門にしたい診療科に専念できるようになるというものです。
改定の目的は、現場の医師不足解消としています。
研究者や専門医の養成を目的とする大学病院に研修医を呼び戻しやすくして、即戦力として活用する効果が期待を期待しているのです。
たしかに大学病院の医師不足は看過できない問題です。
その対応として大学病院が地域の病院から医師を引き上げたことが現在の地域医療崩壊に拍車をかけています。
しかし医師不足は大学病院だけではなく日本の全医療機関の問題です。絶対的な医師不足が根本原因です。
医師研修制度を手直しして地域の臨床研修病院から大学病院に医師を集めれば、臨床研修と地域の急性期医療を合わせて担ってきた地域の急性期病院の運営は窮地に陥り地域医療崩壊はいっそう加速されることになります。
現行の臨床研修制度は平成16年に発足しています。
それに先立つ平成6年医療関係者審議会臨床研修部会中間まとめ「基本的には臨床研修を必修とすることが望ましい」旨の提言をうけた10年間の議論によって創り出されたものです。
平成14年10月の「新たな医師臨床研修制度の在り方について(案)」は「医師には患者の健康と疾病についての全体を診ることが期待されており、特に小児や高齢者に対しては、医師と患者及びその家族との間での十分なコミュニケーションの下に総合的な診療が行われることが必要である。」との認識の下、「適切な指導体制の下で、効果的に、プライマリ・ケアを中心に幅広く医師として必要な診療能力を身につけ、人格を涵養する研修である必要がある。」としました。
現行の研修制度はその考え方に基づいて発足しました。
5年間の実践は、臨床研修病院に医師を育てる課題の重要性を浸透させました。総合的に内科、救急、地域保健・医療、外科、産婦人科、小児科、精神科を研修した、私のまわりの研修医の成長をみれば一定の成果があると言えます。
今回の改定案はその考え方を転換し、総合的な視野をもつ医師の医師の養成を困難にするものです。
「臨床研修は、医療という社会的重要性、公共性の高い事の必要不可欠な要素であり、医師個人の技術向上ということを越えて社会にとっての必要性が強いもの」(「新たな医師臨床研修制度の在り方について(案)」)です。
国民にとってどのような医師をが必要なのか、現行の臨床研修制度は何を目的として開始され、5年間の実践の結果はどのようなものであるか、成果は何か、問題点は何か、改善をどうするのか議論を、医療関係者・医学生・研修医・国民の意見を集めて慎重に結論を出すべきです。
拙速な結論を出さないことを強く要望します。
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