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2009年10月17日土曜日

医療崩壊と医師の林住期

 医師が不足しています。人口千人当たり医師数では、日本は2.1人とOECD加盟30カ国中下から4番目であり、少ない国の部類に属しています。
英米でも2.4~2.5人、ヨーロッパ先進国は3.5人前後であるのと比較すると如何に少ないかが分かります。


厚生労働省の「平成16年医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、医療機関と老人保健施設とその他の機関で医師として働いているのは27万5千人です。
そのうち、50歳代が20.5%、60歳代が9.0%、70歳以上が11.0%です。
実に50歳以上が40.5%を占めているのです。
50歳以上の医師の力が無ければ日本の医療は維持することはできません。


五木寛之は「林住期」で、古代インドの考え方として50歳から75歳の時期を林住期と紹介しています。
林住期は、社会人としての務めを終えたあと、すべての人が迎える、もっとも輝かしい「第三の人生」であり、50歳で生き方にひと区切りをつけ、林住期を「生活(暮らし)のためでなく(自分の人生を自分のために)生きること」を提案しています。


先日も同僚が定年を前に退職しました。
彼は自分のしてきた過酷な長時間過密勤務に触れながら五木寛之の言う林住期を、病院を退職してリセットして過ごしたいと言っていました。


五木は「好きな仕事して生涯を終えることができたら、それはたしかに幸せな人生である。」と述べ、仕事を生涯続けることを否定していません。
しかし退職した私の同僚を含め多くの50歳以上の医師が、「本当に自分のしたいことは何なのか」と今考えているのではないでしょうか。
そのうちの何割かが医師をやめようと決断したら日本の医療崩壊は雪崩をうって進むことになります。私も来年還暦を迎えます。
「林住期」の医師たちが喜びを感じながら働き続けられる環境が早急に整備されること切に望みます。

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