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2009年10月31日土曜日

新型インフルエンザワクチンの購入価格

新型インフルエンザワクチンの接種が始まっている。
ワクチン接種に公的負担がなく、一回当りの接種費用が3000円を超えており広くワクチンを普及する障害になっている。

10月14日付けで厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部より日本医師会経由で各医療機関にワクチン購入価格の指示がだされた。
それによると、1mlバイアル(2回接種分) ワクチン本体1,725円+流通経費(販社→卸)644円+流通経費(卸→医療機関)428円+消費税139円=2936円である。
一回分はその半額だ。

価格は医療機関の交渉の余地はなく厚生労働省の公定価格である。
そして接種費用も公定価格である。
医療業界でも珍しい事態だ。

この購入価格が正当なものであるかどうかの吟味が必要だ。
諸外国のワクチン購入価格がいくらか知りたい。
報道機関、研究者、政治家の調査を期待する。

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2009年10月25日日曜日

医療従事者用新型インフルエンザワクチンが来ない

「先生はもう新型インフルエンザワクチンをうたれたのでしょう」と患者さんに言われました。
「いやー、ワクチンが来ないのです。私もいつうてるかわかりません」
昨日の診察室の会話です。

新型インフルエンザのワクチンは19日には来るには来たのですが、6人分しか来ませんでした。
当クリニックには医師が6人、看護師が15人働いています。
これでは足りません。
事前の医師会から調査で必要本数を申請していたのですが6人分しか来ませんでした。
医師会は診療所の平均は6人だから、一律6人分配分したとのことです。
何のために事前調査をしたのでしょう。
当院ではまず6人分を一番リスクの高い小児科の医師と看護婦に接種しました。
残りの医師看護婦のワクチン接種のめどは立っていません。

当クリニックが所属する法人の透析クリニックでも6人分しか提供されませんでした。
これではリスクの高い透析患者に身近で接触するスタッフが感染して患者を感染させる可能性が残ります。

次のワクチン配分は11月中旬のハイリスク患者と妊婦対象のものになるようです。
これも必要本数の見込みを医師会に報告しましたが、一律何人分供給と今回と同じようになるのではないかと心配しています。
そうなれば混乱が起こることは必至です。

これまで経験したことのない事態ですから不十分のことが起こることは十分に理解できます。
しかし不十分点は早く是正されるべきです。
医療機関へのワクチン供給は診療実態に見合ったものに是正されることを要望します。

JR福知山線事故の真の原因がここに「電車運転士の労働と眠気」(重田博正著)

JR西日本と国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)委員の調査情報漏洩が明らかになった。
JR西日本が福知山線事故に真摯に向き合い、被害者に謝罪と事故原因の究明そして再発防止をする資質を持っているのかについて疑念が広がっている。
そして事故調査委員会が作成した調査報告書に対しても不信が生まれている。

そんな今、097月に出版された重田博正著「電車運転手の労働と眠気」(文理閣)を多くの方が読まれること推奨する。http://www.amazon.co.jp/電車運転士の労働と眠気―JR福知山線事故が提起する安全の条件-はたらく人々のいのちと健康-重田-博正/dp/4892595977/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1256464572&sr=8-1

重田は大阪民医連社会学研究所の主任研究員で事故直後の0511月~12月に実施した国労近畿地本所属の労働者63名の勤務中の眠気調査を行った。
本書はその調査をもとに書かれている。

調査の結果は以下の様である。
最近一カ月の乗務中の眠気
ほぼ毎日 22% 週23回 27% 週1回 21% 月23回 21% ない 2%
過去1年、眠気によるミス・ヒアリハット
あり 59% ない 33% 無回答 5
そしてその乗務中の眠気は前野勤務して事業所に泊まり翌朝勤務する、明け勤務に集中している。
夜間勤務から就床まで30分未満が最多
睡眠時間は4時間台が最多
起床から明け勤務開始までは30分以下が最多

明け勤務の眠気の原因は労働者の生理を無視した労働条件による睡眠不足と断定している。

事故の当事者の運転手も明け勤務で事故を起こしている。
睡眠不足の状態で伊丹駅でのオーバーランを起こし、処分を怖れパニック状態になり事故へ突入したと思われる。

重田は利益至上主義のJR西日本の労働条件による多発する眠気が事故を引き起こしたと断じている。

重田は乗務中に列車運転手が眠気を感じる労働条件を改善しなければ、再び事故は起こる可能性がある。
国による列車運転手の労働時間規制を行う必要があると提言している。

あなたの乗っている列車の運転手は運転中に眠気を感じながら運転しているかもしれない。
ぜひ読まれたい。

日米安保条約の要否を議論する時が来た

沖縄の普天間基地の移設問題で、民主党政権が右往左往している。
首相が県外移設を口にした直後に岡田外務大臣が「県外移設はない」「嘉手納基地への移設を検討中」と発言した。
背景には相次いで来日したアメリカの国防長官・統合参謀本部議長の「県外移設はない」「辺野古沖への早期の移設実現を」との要求がある。

政権発足時の民主・社民・国民の三党合意では、
「主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米同盟関係をつくる。日米協力の推進によって未来志向の関係を築くことで、より強固な相互の信頼を醸成しつつ、沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。」としている。
日米同盟の枠内で沖縄県民の負担軽減の観点から米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直そうというのである。
日米同盟の枠内ではその合意が守れない事態になっている。

統合参謀本部議長は「日米合意の履行が遅れれば日本の防衛だけでなく、アジア太平洋地域の安定にも死活的影響が生じる」と鳩山政権と日本国民に脅かしとしかとれないスピーチを残している。

「死活的影響」を誰が誰にどの様に与えるのか。
沖縄県民に過酷な基地負担を強いてまで米軍基地を維持する必要があるのか。
そして自民党政権下で維持されてきた日米安保条約がこれからも必要か。
これらを議論する時が来た。

「普天間基地撤去問題が解決しなければ、日本国民は日米安保条約廃棄の選択を検討する」とのメッセージを明確にアメリカに発信したい。
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2009年10月19日月曜日

新型インフルエンザワクチン 米英仏独無料

日本では新型インフルエンザワクチンの接種が始まりましたが原則自己負担となっています。
欧米の状況を共産党の小池晃議員の事務所を通じて厚労省に問い合わせました。
米英仏独の各大使館の専門職員から以下の回答が寄せられました。

アメリカ
ワクチン代:無料
接種費用:未定
・民間医療保険:保険内容による
・公的保険(高齢者および低所得者):接種費用もカバーする予定
※保健当局が実施する場合は無料の予定

イギリス
優先して接種すべき対象者は、無料
(医療福祉従事者、基礎疾患を有する者、妊婦等)

フランス
ワクチン代:無料
接種費用:未定
※財源:
・ワクチン代:国と疾病金庫で折半(保健省発表)
・接種費用:未定
ドイツ
無料
※財源:
・基本的には医療保険者が負担
・接種対象者が被保険者の5割を超えた場合は、超えた費用を州が負担(調整中)

日本では当たり前のように3000円から6000円の費用を徴収しているが、世界の動きとかけ離れていることがよくわかります。
今からでも遅くありません。
ワクチン接種に公的補助を行ってください。

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2009年10月18日日曜日

強いられた死を拒否しよう


日本では自殺者が急増しています。
今年は4万人を超える見込みです。
17か月にわたり戦われた日露戦争では88千人が戦死しました。
それと同規模の死者数です。
大阪では毎日5人から7人の方が自殺しています。
異常な事態です。

自営業者の方は3200人(20年)自殺しています。
私が診察室で業者の方から話を聞いて驚くのは、みんな労働基準法とは無関係に必死の長時間過密労働をされていることです。
従業員の給料を払い続けるため、資金を返済するために必死で働いています。
しかしこの弱音を吐かずがんばることが問題なようです。

私も「このまま死んだら楽になる」、ホームに入って来る電車を見てそう思ったことがあります。
研修医時代二日続きの徹夜の泊まり込みの後、家に帰る地下鉄のホームでした。あまりに疲れたからです。

無理な働き方は今の社会のシステムから強いられたものです。
無理な働き方が自殺を引き起こすのです。
斎藤貴男は自殺を自ら選ぶ死ではなく「強いられた死」と呼んでいます。
利潤のためには人を死に追いやっても意に介さない市場原理主義がその元凶です。
そして弱音を吐けないのは「自己責任論」にマインドコントロールされているからです。

「助けてほしい」と声を上げること。
そして助けを求める声には援助の手を差し伸べること
それが必要です。
力を合わせて人に死を強いる社会システムを変えていきましょう。

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2009年10月17日土曜日

大阪府庁のWTC移転を熱望する橋下知事への提案


橋下大阪府知事殿

WTCへの大阪府庁の移転を熱望されていると聞きました。
わたしは府庁が古より大阪の行政の中心であった上町台地から離れることの意義をまったく感じません。
府庁だけが移転し、府警本部や政府関係の事務所が残ることは行政の効率を落とすことになります。
特に咲洲に移転することは府民のアクセスも悪く、災害時に孤立する可能性が大で止めるべきです。
知事がどうしても、咲洲移転を実施したいなら、以下の点を準備されることを提案します。

1、震災・津波時は咲洲への自動車交通は遮断される可能性が大です。
その際は、知事を含めた大阪府職員は液状化した道路を自転車を押して通行し、ある場合は大阪湾を泳いでわたる必要があります。
エレベーターが故障したWTC内の高層フロワーへの階段を駆け上がる必要があります。
知事を先頭に全府職員がスイム・バイク・ランのトライアスロントレーニングを始めてください。
毎日ドリンク剤を飲んでTVコマーシャルのように頑張れるようになってください。

2、咲洲・WTCは孤立する可能性があります。
府民を救援するどころか咲洲の知事・職員を救援する必要が出てくると思われます。
府民はそんな所に移転して災害にあったのは自己責任だとして、知事や府の職員を見捨てることはありません。
しかし、優先の救援対象にはなりません。
交通が途絶した中では救援は簡単に進みません。
救援物資が届くまでの食料・水を備蓄してください。
しばらくの間の耐乏生活を覚悟してください。
橋下知事は月に1回は一日カンパンと水で暮らす練習をしてください。

3、震災時は咲洲府庁では救援活動の指揮をすることは困難になります。
災害対策計画を改定して仮設府庁舎をどこに建てるか検討し予算と資材を今から確保してください。
私は地盤のしっかりした大手前公園に仮設府庁を開設するのがいいと考えます。
仮設開設の際は先住の方々に「これまでは失礼しました」とちゃんとあいさつしてください。

本当に心配しています。
真顔で提案します。

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大阪府庁はWTC移転では防災拠点としての役割ははたせなくなる


府議会では大阪府庁のWTC移転問題が再度議論されている。
2月の府議会で否決されたのにもかかわらず、防災課題が解決されたと再度橋下知事が議会に移転案を提案している。
8月に出された大阪府大阪市連名の「咲洲の防災機能に関する検討報告書」が提案の根拠になっている。
それの内容を吟味し防災上の課題が解決されたのか見てみたい。

報告書は「大阪府庁の WTCビルへの移転検討にあたり、この地において大阪府の防災拠点として必要となる体制を確保できるかが、大きな検討課題である。庁舎となる WTCビルが防災拠点としての性能を有していることはもちろんであるが、大阪府の防災体制を構築し、災害時の最優先業務を遂行する上で、必要となる大阪府職員の WTCビルへの参集が可能であることが大前提となる。」と課題を設定している。
そしてその前提として「大規模地震発生時には、公共交通機関の運行が停止し、自動車交通の運行に支障を来たしていることが予想されることから、徒歩や自転車による参集を前提にした検討を進める。」としている。
咲洲の府庁舎には車で参集することができないことが前提になっている。
阪神大震災の救援活動は私も医療支援に参加したが、主に自動車で人も物資も運んだことを覚えている。
しかし咲洲の大阪府庁舎は自動車交通から遮断されるというのが前提である。


検討の詳細を見ると、咲洲には此花ルート、築港ルート、住之江ルートと阪神高速湾岸線の四つしかない。
これが埋めた地の島の限界で、内陸とは面ではなく線でしかつながっていない。
この四つの線が切れれば孤立するのである。
そして住之江ルート以外は自動車専用道路である。
報告書では此花ルート、築港ルート、住之江ルートのすべてが液状化により自動車が通れなくなる可能性があるとしている。
報告書は阪神高速については検討していないが、高速の道路の危うさは阪神大震災で経験済みである。
自動車は咲洲に行けないし出ることができないと予想されている。

報告書は津波対策や橋の耐震対策を追加ですれば、職員が液状化の道路を自転車で走れないとしても押しては通れるとしている。
もちろん大阪湾を泳いでも咲洲に行くことはできるだろう。
職員がほうほうの体で府庁舎に駆けつけてくれるのはありがたいが、被災地に出動することもできない。
これで防災拠点の役割を果たせるとは思えない。
報告書の結論は論理的に読めば、咲洲は防災拠点としては不適ということになる。
決して防災の課題は解決されたという結論にはならない。

だれも望むことではないがXデーが来た時、孤立した咲洲府庁をみて「誰がこんなところに移転させたのだ」との声が起こることは間違いない。
その時橋下氏はどこにいるのであろうか。
格差社会の現実に小泉氏や竹中氏がそしらぬ顔をしたのをまねるのだろうか。

現在地で耐震工事を含めた改修することと、WTC移転とどちらが府民の利益にかなうかの冷静な議論が必要である。

脅かされようがすかされようが、「府庁WTC移転は間違っている」との声をあげなければならない。
「王様は裸だと」叫ばなければならない。

新型インフルエンザ対策 ペットボトルの回し飲みは絶対にダメ


私の勤務するクリニックのある地域では新型インフルエンザが流行している。
秋祭りの最中の10月4日以降患者が急増してた。
7日ごろからは感染した子供の親の2次感染もみられる。
だんじり祭りで多くの人が長時間密集したことが原因と考えられる。
ペットボトルの回し飲みも原因の一つと思われる。
つばや汗がかかるほど人が密集する行事は注意が必要である。
学校での感染も狭いところで人が密集するバレーやバスケットなどのクラブでの集団感染が多い気がする。

沖縄県医師会の宮里善次理事は「感染者の多くは中高生でクラブ活動のバレーボール、バスケット、野球など汗まみれでのボールのパス、ペットボトルの回し飲みなどを介して接触、飛沫感染が生じたと考えられる。」と報告している。http://blog.m3.com/den/20091004/2

テレビでみるサッカーの試合でもペットボトルの回し飲みをしていた。
この時期、ペットボトルの回し飲みは絶対に避けなければならない。

新型インフルエンザワクチン高額自己負担は世界の非常識

新型インフルエンザの6150円もの自己負担は納得できません。
ハイリスクの方をふくめてワクチン接種がどうして本人負担ですか。
費用負担が原因でインフルエンザワクチンを断念する人が出ます。
これではインフルエンザ対策はうまくいきません。

フランスに住む娘にフランスの事情を聞いてみました。
65歳以上と病人は無料で、それ以外は600円程度の負担でそれも健康保険から償還されるようです。
テレビではアメリカも無料と報道しています。
オーストラリアもイギリスも無料と聞いています。
またまた日本の常識は世界の非常識ということです。

国と地方自治体は少なくとも季節性インフルエンザと同程度の負担軽減策を行うべきです。

新型インフルエンザワクチン接種、従前の季節性インフルエンザと同程度の負担軽減を

新型インフルエンザ接種の基本方針が概要が明らかになった。
10月19日をめどに接種を始め、(1)医療従事者(2)妊婦と基礎疾患のある人(3)1歳~小学校低学年(4)1歳未満の小児らの保護者(5)小学校高学年~高校生と高齢者--の順に進める。
同じ医療機関で2回打った場合、接種費用は計6150円になる。
低所得者(住民税非課税)の人は公費負担があり無料となる。

新型インフルエンザはこの半年で30%以上の人が感染する。
そのうち1ないし5%が入院を要するほど重症化する。
そして0.1%ないし0.5%の人が死亡する。
基礎疾患がない人もふくめウイルス性肺炎や多臓器不全を起こすことがわかってきた。
その予防策として、手洗いなどの飛沫感染予防策とワクチン接種が必要とされている。
また感染を疑った場合は早期に抗インフルエンザ薬を投与することが推奨されている。

その新型インフルエンザに対するワクチン接種がどうして6150円の自己負担なのか。
専門職として第一線で働く医療従事者のワクチン接種の費用は、まさか本人負担ではなく医療機関負担になると思われるが、どうして医療機関負担なのか。
ハイリスクの方をふくめてワクチン接種を希望するのがどうして自己負担なのか。
政府は6150円の自己負担がワクチン接種の障壁にならないと考えているのであろうか。
前政権は景気対策として特別給付金を1万2千円ないし2万円を配ったが、今度はその3割から5割をワクチン代として徴収しようというのである。

もともとインフルエンザは91年から予防接種法で2類疾病と定められ65歳以上の方に接種が推奨され、多くの自治体で公費負担が実施され1000円程度の負担で実施されている。
にもかかわらず、感染力も強く死亡例も多いとされている新型インフルエンザにたいするワクチンでは6150円を徴収しようというのである。
この乖離をどう説明するのか。

新型インフルエンザの6150円もの自己負担は全く同意できない。
費用負担が原因でインフルエンザワクチンを断念する人が出ることは容易に想像できる。
優先接種対象のワクチン接種がすすまず、お金のある優先接種対象外の方に接種することになる。
これではインフルエンザ対策に支障がでる。

宮城県角田市のように一部自治体では独自の助成をする動きがある。
しかし大阪府の橋下知事は低所得者の費用負担で自治体負担が出る可能性があることで政府を批判するが、インフルエンザワクチン接種での住民負担を軽減する方策に言及していない。
彼のいう地方分権の目的が、住民の生活と福祉の向上にあるのではないことが見て取れる。

インフルエンザへの対応は自己責任論ではうまくいかない。
憲法25条は
「1、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2、国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」としている。

国と地方自治体は少なくとも従前の季節性インフルエンザと同程度の負担軽減策を行うべきである。

インフルエンザ大流行に備え助け合いのネットワークを

週を追うごとにインフルエンザの患者数が増加している。
毎日の外来でもインフルエンザワクチンについての質問が出されている。
新型インフルエンザの大流行が起こり、来春までに国民の30%が罹患するという可能性が現実的なものに感じられる。

新しい疾患のため、予防法・ワクチンの投与方法・抗ウイルス薬の適応などについて根拠にもとずく方針が確定していない。
例えば感染症学会のタミフル積極投与の方針についても、その論拠の丁寧な開示がないため、どの診療方針をとればいいのか医療関係者に戸惑いがある。

国外の模索についても広く情報を集め診療に生かしていく必要がある。
なかでも、英国が提唱している「フル・フレンド」作りの呼びかけは参考になる。
今回のインフルエンザはほとんどの人は軽症で経過し、1週間ぐらいで回復する。問題は1人が罹患すると1.9人に感染させることである。
それを避けるためにインフルエンザに罹患した人が外出して他人に接触することがないように、医薬品・食糧・生活必要品を調達する「フル・フレンド」のネットワークを作ろうというものである。
もちろん家族でもかまわない。
インフルエンザの診断も軽症であれば、医師に受診することなくネットで問診票に回答すれば、処方箋番号が入手でき、「フル・フレンド」が代理で薬の配布ポイントで抗ウイルス薬を受け取ることができる。
詳細は英国保健省のHP(http://www.direct.gov.uk/en/groups/dg_digitalassets/@dg/@en/documents/digitalasset/dg_178842.htm)を参照されたい。
実施後のメリット・デメリットについて知りたい。

日本では単独所帯が増加している。
その人々もインフルエンザに罹患する。
治療も受けられない、食事もできない、むざむざ孤独死する事態を起こしてはならない。
その人たちを支援する「フル・フレンド」のネットワークを急いで構築する必要がある。
ワクチンや治療薬やマスクだけに頼らず、インフルエンザに対処するあらゆる知恵に学んで、この難局を乗り越えたい。

新型インフルエンザ対策に関する厚労省と感染症学会の見解の違い

新型インフルエンザは感染の急増期を目前に控え臨床現場に緊張が高まっている。
15日感染症学会の「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」第2版が発表された。
その中で新型インフルエンザS-OIVは「弱毒」ではないそして抗インフルエンザ薬で早期から積極的に治療すべきだと提起された。
臨床現場ではこの提言にそって診療を進めることになる。

しかし感染症学会の提言はこれまでの厚生労働省の見解と異なる点がある。
早急に政府と学会の見解の一致をはかるとともに、実行可能な条件整備が必要である。

これまでの厚労省の見解では重症化する可能性のある人は、妊婦と小児そして呼吸・心・腎・糖尿・免疫不全の基礎疾患のある人とされている。
しかし国内外の知見では基礎疾患のない人の死亡例が出ている。
その点を踏まえ感染症学会では新型インフルエンザと臨床的に診断した場合は「ハイリスク」の人に限らず早期に抗インフルエンザ薬を投与すべきとの見解を表明した。

3日付、厚生労働省のインターネットテレビに「新型インフルエンザあなたの?に答えます」(受診と療養編)によると、「(ハイリスクの方以外は)症状が比較的軽く自宅で常備薬で療養できる方は病院に行く必要はありません」としている。
感染症学会見解と明らかに異なるものである。
基礎疾患がなくてインフルエンザ様症状を呈した人はどうすればいいのか、厚労省は改めて方針提起を行う必要がある。

またもし感染症学会見解が全面的に実施されれば医療機関の抗インフルエンザ薬はたちまち底をつく。
国が備蓄している薬剤の放出の計画を明らかにしてほしい。

そして早期治療を求めて患者が第一線医療機関に殺到して医療機関はパンクすることが予想される。
イギリスではインターネットでの問診だけ受診なしで抗インフルエンザ薬を処方するシステムを動かして成果をあげたと報道されている。
その経験も参考に日本で実施可能な大量の患者の早期受診・治療を確保するためのシステムが求められる。

新型インフルエンザ対策はこれまで経験しなかった事態である。
臨床現場と学会と行政が協力し合って市民を守らなければならない。
ともにベストを尽くしましょう。

感染症学会のタミフル積極使用方針について

感染症学会から「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」第2版と「新型インフルエンザ 診療ガイドライン (第1版)」が発表された。
インフルエンザを疑った場合にタミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬を積極的に投与するべきと明言している。
臨床現場ではいくつかの疑問・不安を持ちながら「診療ガイドライン」にそって診療をはじめている。

提言は「2009年8月21日にWHOから新型インフルエンザの治療ガイドライン10)が発表されました。
そこには、軽症の若年者や健常成人ではオセルタミビル(製品名:タミフル)やザナミビル(同:リレンザ)等の抗インフルエンザ薬の投与は必ずしも必要ではない、と記載されています。先述の「弱毒」見解と相俟ってわが国でも「抗インフルエンザ薬の投与は必ずしも必要ではない」とする意見が散見されます。しかし、これは危険です。」と断言している。
本当にそうなのかとの疑問がある。

本ガイドラインが他の種々ある診療ガイドラインと異なり複数の臨床研究総括から科学的根拠をもって作成されたものではない。今進行しているアウトブレイクの最中のガイドラインだから仕方がないと考えるが、他のガイドライン以上に科学的根拠を積み重ね検証していく必要がある。

一般論では「診療ガイドライン」は医師の個々の診療を拘束するものではない。
しかし患者にガイドラインの内容を十分に説明したうえでガイドラインに準拠するのか否かの診療方針を患者に提示する義務がそれぞれの主治医にある。

ほとんどの日本の医師はガイドラインにそって抗インフルエンザ薬を積極的に使用することになる。
感冒でも念のためにと投与する乱用や、従前から問題になっている異常行動などの副作用も警戒していく必要がある。

臨床現場では抗インフルエンザ薬がたちまち払底することになる。
政府は公的備蓄放出の方針を直ちに明らかにしてほしい。
備蓄の少ない外国に対する援助も実行してほしい。

日本政府はインフルエンザ対策で国際貢献の立場を明確にしなければならない

インフルエンザワクチンの話題でもちきりだ。
来る患者来る患者がその話題を出される。
「自分はうってもらえるのか」「いつうてるのですか」と。

必要数がたりない国の基準に従い優先順位を決めてうつことになるとの説明をしている。
これまで日本の医療では医学的適応と患者の意向により医療行為を選択してきた。
しかし今回は、資材の量に従い対象を選択することになってしまった。
選択の基準は重症化するリスクの高い方から順番にということだ。船が沈没しかかっている時に救命ボートの数が足りないから成人男子は船に残り、自力で命を守れというやつである。
しかたがないといえばしかたがない。

国内のワクチン不足対策として日本は外国から輸入をして接種を行おうとしている。
待ち望んでいる国民を多い。
もっと早く輸入ができないのかとの意見もある。

しかし、ワクチンの自国生産も、輸入もできない国の国民はどうなるのだろうか。
ハイリスク方優先との見解は是認するとして、全世界のハイリスク者にワクチンを接種することが緊急の課題である。
ワクチン入手困難の国ほど保健医療体制が不十分でより重症化するリスクが高いと考えられる。
世界的な視野でワクチン接種の方針を実行する必要がある。お金のある国がお金にあかしてワクチンを買いあさるのは21世紀にはふさわしくない。
たとえば外国かららワクチンを購入するなら、その半分をWHOに寄付し困難な国の国民支援にあてることが必要だ。
日本政府はインフルエンザ対策で国際貢献の立場を明確にしなければならない。

日本国憲法前文には次のように記されている。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」

ワクチンが足りない

ワクチンが足りない。
今週の始めから肺炎球菌ワクチンの在庫がなくなった。
卸に連絡をとっても今月は数本しか納入できないとのことである。

7月以来、インフルエンザ感染時の肺炎合併 予防のために肺炎球菌ワクチンの接種呼びかけてきた。
8月には約50名の方に接種した。
9月には200名ぐらいの人に接種しようと意気込んでいた矢先の品切れである。
1-2か月に一回の定期の受診で来院された患者さんも、「今日はワクチンをうってもらうつもりで来たのに残念だ。前回の受診時にうっておけばよかった。いつ頃になったらうつことができますか」と言われる。
「製薬会社の話ではいつ頃とは言えない状況です」と答えるしかない。

このワクチンは国内産ではなくアメリカからの輸入にたよっている。
5月来の新型インフルエンザ対策で日本国内の需要が急増し供給が追いつかなくなってしまった。
10月には新たな入荷があるようだが末端の医療機関にはどの程度来るかわからない。
アメリカでは国内用に備蓄の体制に入っており、輸出量に影響が出ているようである。

肺炎球菌ワクチンだけではなく、季節性インフルエンザ・新型インフルエンザワクチンも供給が不足するといわれている。
診察室で患者さんは、「ワクチン接種はいつからです。自分はうってもらえるのですか。」と不安を述べられている。

国民に安全・安心を保障するためにも肺炎球菌ワクチンのように高齢者への接種が世界標準になっているワクチンは公的責任で確保し希望者全員に公費で接種できるようにする責任が国にあると考える。
厚生労働省の奮闘に期待する。

憲法を護るために民主党を一人勝ちさせてはならない

10年5月より改憲原案の提出・審議が解禁になる。今回の衆議院選挙で選ばれる新議員は憲法改正にかかわる可能性がある。

日本国憲法第96条は憲法改正にについて、「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」

社会保障政策だけでなく新国会が憲法問題でどのような議員構成になるか注意してみておく必要がある。
少なく見ても改憲に反対する国民は50%前後いる。
各論の政策に幻惑されてむざむざ改憲賛成の議員に3分2以上の議席を占めさせてはならない。

2007年8月7日づけ『朝日新聞』は「参院「改憲派」、3分の2を割る」と報道している。
「7日召集の臨時国会に登院する参院選の当選者のうち憲法改正に賛成なのは48%と半数を割っていることが、朝日新聞社と東京大学の共同調査で明らかになった。非改選を合わせた新勢力でも53%。政治家の意識を調べるこうした共同調査は03年の衆院選以降、国政選挙のたびに実施してきたが、改憲賛成派が憲法改正の発議に必要な3分の2を割り込んだのは初めて。」
「今回の当選者では、憲法を「改正すべきだ」と「どちらかと言えば改正すべきだ」を合わせた改憲賛成派は48%。「改正すべきではない」「どちらかと言えば改正すべきではない」の改憲反対派は31%だった。」
「政党別では改憲賛成派は自民(91%)、公明(67%)、国民新(100%)の3党で多数を占めた。これに対し、民主では改憲賛成派の29%を改憲反対派の41%が上回った。共産、社民、1人当選の新党日本の各党では全員が「改正すべきではない」と回答した。」
その要因は改憲賛成派が9割前後だった自民の大敗が影響したこと。
そして民主はこれまでの調査では衆参を問わず6、7割の議員が改憲賛成派だったが、今回の参議院選挙で改憲賛成派が初めて4割を割ったことを挙げている。

弱者切り捨ての政治を転換するために政権交代が必要なことはあきらかだ。
しかし政権を担うと予想される民主党の憲法に対する政策に注意する必要がある。

4年前の05年衆議院選挙のマニフェストでは民主党は、憲法問題をトップに掲げ、改憲を推進する・そのための国民合意をとる・国会議員の3分2以上の合意を達成するとしていた。
しかし07年参議院選挙・今回の衆議院選挙ではマニフェストの最後に憲法問題に言及している。
「民主党は2005年秋にまとめた「憲法提言」をもとに、今後も国民の皆さんと自由闊達な憲法論議を各地で行い、国民の多くの皆さんが改正を求め、しかも国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討していきます。」
憲法改正へ積極的に国民合意をとる立場からトーンダウンし、国民の意見の動向を窺うという政党としては奇妙な立場を表明している。
政策が変わることは必ずしも悪いことではない。
しかしどういう理由で変えたのかを民主党は明らかにする必要がある。

先の朝日の調査でも明らかなように民主党には顕在・潜在の改憲推進派が多数いる。
見落としてはならないないのは鳩山由紀夫氏は改憲を目的とする超党派の議員連盟、新憲法制定議員同盟の顧問であり、前原誠司氏は副会長である事実である。
鳩山氏は新首相に就任された場合、今回のマニフェストに鑑み新憲法制定議員同盟を脱退される意思はあるか、そして任期中は憲法改正の発議をしないことを明らかにしてほしい。

護憲の立場に立つ皆さん
我々は国民の約半数を占めている。
07年参議院選挙に引き続き衆議院でも改憲派を3分の2以下を実現しよう。
政権交代を期待しても改憲推進派の候補には一票も投じてはならない。
議席を与えてはならない。
政策が揺れている民主党を一人勝ちさせるのではなく、護憲の立場が明確な共産党・社民党の議席を増やそう。
これがこの選挙の大きなテーマである。

選挙に行って医療崩壊を阻止しよう

マニフェスト選挙という呼び声がある。
議論は政権与党が4年前の選挙で公約したマニフェストをどれだけ実現し、その結果がどうなったかを評価することから始まる。
それなしには百万遍、今後のマニフェストを語ろうとだれも耳を貸さない。

四年前の選挙は忘れもしない「郵政選挙」であった。小泉自民党は郵政民営化をはじめとする政権公約自民党の約束(http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2005_seisaku/120yakusoku/120_theme01.html)を公表した。
その公約がどう実行され、その結果この国と国民生活がどうなったか、そしてそれを政党がどう認識しているかが問題である。

自民党はHP上で「政策2005の実施状況」を発表している。(http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2009/pdf/seisaku-019.pdf
「政策2005の実施状況」は自己評価として120項目中 A達成55、B取り組み中65、C未着手0としている。
それが彼らの認識である。

医療の項目を見てみたい。
10 持続可能な社会保障体制の確立 評価B
社会保障費が増大する中で、16年の年金制度改革、17年介護保険制度改革、18年の医療保険制度改革と一連の改革を行い、制度の持続可能性を確保するために必要な改革を実施。一方、社会保障の現状は、医師不足、介護人材の不足など、国民が不安を抱く課題に直面している。こうしたことから、昨年末に策定してた「中期プログラム」に沿って、社会保障の安定財源を確保し、機能強化を図ることとする。

12 医療制度改革の断行(安心で質の高い医療提供体制、持続可能な医療保険制度の確立) 評価A
良質な医療を提供する体制を確立するため、医療に関する選択に資する情報提供の推進、医療の安全を確保するための体制の整備、医療計画制度の拡充・強化等を通じた医療提供体制の確保の推進などを内容とする「良質な医療を提供するための医療法等の一部を改正する法律」が164国会(18年)で成立。
国民皆保険を堅持し、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとしていくため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合内容とする「健康保険法等の一部を改正する法律」が164国会(18年)で成立。
20年4月に施行された長寿医療制度については、与党PTにおける「見直しの基本的考え方」をふまえ、今後、具体的な見直しの議論を行っていくこととしている。

自民党は16年の年金制度改革、17年介護保険制度改革、18年の医療保険制度改革実行を成果としているのである。
我々はよくやったと自画自賛している。
国民の社会保障制度への不信を醸成し先行き不安をかきたて、そして医療崩壊を加速させた一連の施策に対する反省のひとかけらもない。
懲りない面々とはこの党ことを言うのであろう。

ここに及んでは、医療に関わる個人と医療関係団体が今回の選挙で自民党を支持する理由は全くない。
過去に自民党を支持してきた方も、今回の選挙では現与党の進めてきた医療を壊滅的な崩壊に追い込む医療社会保障構造改革路線を転換するために政権交代実現の道を選ぶべきだ。

民主党は4年前は医療効率化をめざし自民党と同質の医療構造改革を提案していたが、政策転換し医療への財源の投入を主張している。
共産党は税金の配分を変えて医療・社会保障に重点的に配分することを提案している。

選挙に行って医療崩壊を阻止しよう。

医療が必要なのに医療が受けられない人がこの国に存在していいのか

09年8月1日私の所属する医療法人企画の野宿者相談会をおこなった。
堺市にあるD公園に医師1名歯科医師1名をはじめ約20名がボランティアで参加した。

相談来談者は4名であった。
相談に来られない方には、個別の訪問相談もおこなった。
血圧が170/110でこの6年間血圧も測ったことがない方、こむら返りが頻回に起って困っているが金がないので医者にかかっていない方、前立腺肥大があり保険がないので全額自費で医者にかかっていたが継続が困難になった方がおられた。
当法人がおこなっている生活困窮者に対する無料低額診療制度についても説明させてもらった。

野宿者の方から次のような話がだされた。
「野宿生活で健康保険もなく医者にはかかれない。」
「6年間で医者が来たのは今回で2回目。力になってくれるかどうか、まだ信用できない。」
「今年隣のテントで餓死者がでた。」
「テントに花火を投げ込まれテントの場所を移した。」

07年4月に発表された厚労省「ホームレスの実態に関する全国調査報告書の概要」(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/04/h0406-5.html)  によると、全国で18,564人、平均年齢57.5歳、「5年以上」の者が41.4%となっている。
身体の不調を訴えている者は50.2%、このうち治療等を受けていない者65.8%であるとしている。

堺でも医療が必要で、医療を受けていないかたが多数おられる様子である。
野宿者相談の取り組みは継続して行う必要があると思った。
参加者の無理のない範囲で数か月に一回は行いたい。
今回相談につながった高血圧の方、前立腺肥大治療中断の方、アルコール依存症疑いの方は継続して訪問することにした。

日本国憲法第二十五条には次のように明記されている。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

憲法25条のあるこの国で、野宿者がいること、医療が必要で医療が受けられない人がいることはあってはならない。

民主党は医療崩壊克服の救世主たりえるか

8月30日に総選挙が実施される。
政権交代が現実のものになる日が近い。
医療崩壊の現場で苦闘する医師のなかでは政権交代に期待する声が多い。
医学生定員の150%増、診療報酬の引き上げ等の報道がされるにともない更に期待が高まっている。

新たに発足する民主党政権が医療・社会保障に関する公約を実行することを強く希望する。

気がかりなのは05年の総選挙で民主党が主張していた主要な論点は患者の権利の尊重と診療報酬の適正化であったことである。

民主党05年総選挙マニフェストhttp://www.dpj.or.jp/news/files/BOX_0062_kaku.pdf
「(2)安心し納得できる医療を実現するための改革をすすめます。
①患者の立場に立った予防・早期発見・治療が一体となった安心の医療を実現します。 次期医療制度改革においては、患者の立場に立った予防・早期発見・治療が一体となった安心の医療を実現します。納得できる医療サービスの提供と医療の質の確保・向上を図るため、積極的な医療情報の開示、説明と同意の原則の徹底、患者の自己決定権(リビングウィル)の尊重とセカンド・オピニオンを得るためのルールづくりを行います。 診療報酬改定時には、薬、医療材料、医科点数、歯科点数、訪問看護などについての詳細情報や価格データの公表を行うとともに、パブリックコメントを行うことなどを通じ、保険点数の適正化を図ります。(略)」

05年マニフェストには政府の低医療費政策に対する批判は見られない。

また05年民主党医療政策大綱は http://dpj-tokushima.jp/sengoku/housin.html
「情報を共有し、医療の進歩を不断に追求し、医療連携における無駄を省く。このような試みが医療改革の本質であり、結果として、国民の医療費に対する納得が生まれます。」と述べている。
情報公開と医療連携で無駄を省くことが医療改革の本質であるとしていた。

情報公開と医療連携で無駄を省けば医療崩壊が克服できるとは医師は誰も考えない。

公的医療費を増額し、先進諸国並みにGNPの10%以上を医療にまわし日本の医療を再建することが必要だ。
新政権にその役割を発揮することを大いに期待する。

民主党は4年前の政策からどう認識がかわり政策を変更したのか。
それを明らかにしてほしい。
自民党との違いを出し、支持を増やすための方便で政策を変えたのではないかと言う疑念を払拭して欲しい。

政権党たる民主党が医療効率化論に戻ることを許してはならない。
議会内で民主党政権に低医療費政策の克服を主張する他の政党の役割がいる。
そして大切なことは低医療政策の抜本的転換を成し遂げるために、新政権に圧力をかける議会外の圧力を強めることだ。
民主党に票を投じるだけでは変革は訪れない。
新政権を医療崩壊の救世主にすることができるかどうかは我々の肩にかかっている。

医療崩壊はストップできるのか

大阪南部の医療は再生できるのか。
このままいけばもうすぐ医療崩壊の大波が襲ってくる。
それが参加者の共通の思いである。
7月19日堺市「大阪南部の地域医療を守ろう」と題するシンポジウムが開催され堺市・富田林市医師会長をはじめ各自治体の病院長も含め900名が参加した。

大阪南部は堺・泉州・南河内の三つの医療圏からなっている。
数年来、救急医療の崩壊・病院の縮小・廃止がおこり医療崩壊が顕在化している地域である。
医師不足・医療機関の経営困難打開は医療機関の共通の課題になっている。
医療難民にはなりたくないと大阪南部の市民は考えている。
その思いがシンポジウムに多くの参加者を参集させた。

各医療機関の医師確保・経営改善の努力、そして医療機関ごとの連携・支え合いの実践例が報告された。
また救急車・救急病院の適正利用の取り組みの報告もあった。

でもそんな地域の個別の努力だけでは医療崩壊の大波は防げない。
医療費増が国をつぶすという医療費亡国論を振りまき推進している低医療費政策を転換しなければ地域医療は守れない。
日本の総医療費をG7平均のGDP比10%以上にしなければ日本の医療は崩壊してしまう。

医療を再生させるために何としても低医療費政策を転換させる。
そのために今回の衆議院選挙で政権交代を実現する。
そして市民がパワーを発揮し続け、新政権に医療再生政策の実行をせまる。
これが大切、政権交代だけでは裏切られる可能性がある。
そんな思いが湧き上がるシンポジウムであった。

医療崩壊はストップできる。
大阪南部の医療は再生できる。
必ずやり遂げよう。
私もその礎になりたい。

自分の残された命と通り魔殺傷事件

7月で60歳になった。
あと何年生きられるのか、あと何年医師として働けるのかと考える。
生きられるのは10年か長くても20年、医師としては5年か10年という気がする。
日にちにすると3650日か7300日の余命と言うことである。
限りある命だから、したいことの優先順位を決め一日を大切に生きて行きたい。
今、医師として診療できている喜びをかみしめ、患者さんに感謝したいと思う。

通り魔殺傷事件が08年14件と多発している。
「仕事も金もなく、人生に嫌気が差した。八つ当たりしたくなった。」と自分の怒りを他者に向け、自ら破滅の道を選ぶ人がいる。
そしてその背後には、怒りを自分に向け自らの命を絶つ人が11年連続で3万人超もいる。
限りある命なのにその命の喜びを味わえない。
この日本の社会の現実を何とかしなくてはならない。

私が60年生きてきた日本の社会がこの状況にあるのだから、自分に責任がないとは言えない。
少なくともこの社会の構成員なのだから関係ないとは言えない。
そして大切な子供たちがここで生きていくのだから、この社会の現実から逃げずに立ち向かいたい。
若い人が未来に希望が持て、命を大切に思える社会をつくるためにも自分の残された日々を使いたい。

終末期医療と医師の悩み

 「先生、昨日は大変だったんですよ。」往診の車に乗り込んだとたん看護師が勢い込んでしゃべりだした。
Hさんが食事をとらないので、主治医のM先生が点滴をしようとしたが、患者さんが嫌だと首をふって頑として同意しない。
M医師が手を合わせて「今日だけ」とお願いして点滴をしたが看護師はつねられるやら、蹴とばさられるやらで大変だったそうだ。

Hさんは83歳の女性で骨粗鬆症・廃用症候群のためほとんどベッド上で過ごされおり、ようやくトイレへ伝い歩きで行ける状態だった。認知機能はほぼ正常であるが、以前より検査や入院はあまり希望していなかった。
それが先週から風邪をひいて食事をとらなくなってしまった。

今日はそのHさんのところへ私をつれていこうというのである。
私は「本人は治療不同意か。困りましたね。」とつぶやいた。

Hさん宅で、「水分が不足しています。点滴しましょうか」と話しかけた。
Hさんは首を横に振って不同意をあらわした。
今度は「点滴は止めておきましょうか」と言ってみた。
ひょっとしたら意識がおかしくなっていて今度も首を横に振るのではないか期待して尋ねた。
しかし、Hさんはウンと首を縦にふった。
「そうですか。私は点滴をした方がいいと思うのですが、あなたの同意のないことはしません。」と言い、点滴しないことにした。
それをカルテに入力した。
帰り際に「今後、どうするかは家族で話あって決めておいてください。」と嫁に言った。
先生はいつもクールだから点滴しなかったと看護師に言われるだろうなと思った。

二日たって今度はK医師が往診に行った。
K医師は僻地の診療所で勤務したことがある温厚な医師だ。
患者さんの状態を見て、「医師として患者さんを良くできる可能性があるのに、何もしないわけにはいかない。
点滴します。」と言って、さっと点滴セットを自分で準備し点滴をはじめたのである。
不思議なことにHさんは、K医師を見つめたまま抵抗しなかった。
翌日、訪問看護ステーションから「点滴しないことになっているのになぜしたのか」との詰問の電話がかかってきた。

家族会議の結論は「できるだけ長生きしてほしいが、本人が希望しない点滴や入院はしないで家でみたい。」お嫁さんはプリンをスプーンで口に入れたり、ジュースを注射器で少しずつ注入したりしてくれた。

Hさんはそれから1週間たって亡くなった。
ちょうど84歳の誕生日の翌日であった。

がんの末期のようにどの医師が診ても終末期とわかる状態がある。
しかし慢性疾患で次第に弱ってきた方が風邪や脱水など治療可能な病気をきっかけに状態が悪くなった場合を終末期と呼べるのかが難しい。
医療は本人の同意が原則だが、ひょっとしたら良くなるのではとの気持ちが医師にある時は悩ましい。

Hさんの場合はこれでよかった、本人の希望や家族の希望に添えてよかったと思う。
またM医師やK医師と一緒に診療できてよかったと思う。
これからも悩みながら患者に寄り添える医師集団でありたい。

50歳以上の男性は前立腺癌検診を受けましょう

日本泌尿器科学会は、50歳以上の男性にPSA健診を推奨しています。
以下06年に泌尿器科学会が発表した前立腺癌健診ガイドラインの要点を紹介します。

前立腺は男性にだけあり、精液の一部をつくる臓器です。
前立腺は、恥骨の裏側に位置し、膀胱に隣接しています。この前立腺にがんが発生する病気が前立腺がんです。

現在、日本で発見される前立腺がんの約30%は主に骨へ転位した状態で発見されます。
現在将来前立腺がんにかかる人の数は男性がんの6番目ですが、今後増加し、2020年には、肺がんや大腸がんとならんで最も頻度の高い男性がんになると予想されています。

前立腺がんは血液でPSAという物質をはかると発見されます。
健診をおこない転移した進行がんになるまえに早期に発見し治療につなげたいと考えています。

アメリカでは、50歳以上の男性の75%は少なくとも1回はPSA健診を受診し、1992年以降、前立腺がんの死亡率は低下し続けています。

オーストリアの研究でも、検針対象住民の86%が少なくとも一回は検診を受診した結果、天胃がんの罹患率は70%も低下し、2005年の前立腺がんの死亡率は予測値と比較して54%も低下しました。

以上二つの国のPSA検診の結果は、PSA検診と、それに続く適切な治療が前立腺がんによる死亡率を下げる確かな効果があることを示しています。

日本泌尿器科学会は50歳以上、家族に前立腺がんの患者がいる人は40歳あるいは45歳からの検診受診を勧めています。

1000人の方が検診を受診すると14.8人の方にがんが見つかります。
その方を適切な治療につないでいくことができます。

対象に該当する方はぜひ検診を受診されることをお勧めします。

以下は私の意見です。

現在の日本では前立腺がんの公的な検診制度はありません。
検診を希望すれば、それぞれの費用の自己負担のもとで行われます。
前立腺がんは血液検査で簡単に見つけることができるという知識を広めて多くの人が検診を受けるようにしていきましょう。

しかし、それだけでは検診が普及することは難しいです。

がんを早期に発見すれば命も救えます。
また、がんの治療にかかる医療費も少なくて済みます。
この検診が該当するすべての人が受けられるように、公的検診として制度化かれ特定健診などと一緒に行なうことができるようにすることを、国と自治体に要望します。

朗読者・愛を読む人

戦争犯罪にかかわった女性の不幸とその女性を愛した男性の苦悩を描いたものです。

あらすじはあえて述べません。
ネット上でいくつもの紹介があります。
小説も映画もぜひ自らが味わわれることをおすすめします。

テーマは、年の差のある男女の恋愛、ナチスの虐殺への加担、そして読字障害です

年上の女性を愛した男性がその女性が突然失踪し彼女に捨てられた、自分もまた彼女を傷つけたとの思いを人生を通じて引きずりながら生きてきます。

彼女は文字が読めなかったのですが、彼が刑務所に送り続けた朗読テープを聞くことをきっかけに学習・訓練し読字障害を克服します。
その後、彼女から彼に対して手紙を繰り返し出しますが、彼女が熱望する彼からの返事はありません。
釈放の直前に彼が面会に来ますが、抱擁も口づけもありません。
彼は戦争犯罪を犯した彼女を身近な存在としては受け入れることができなかったのです。
心の中には彼女が常にいるのですが現実の彼女を全面的に受け入れることができません。
そして釈放の前夜、彼女は自ら命を絶ちます。

彼女のかっての仕事はナチス強制収容所の看守です。
アウシュビッツへ送る捕虜の選別をする任務を果たしました。
戦争を遂行した権力者ではなく、一般市民が戦争犯罪に加担していく悲しい過程です。
裁判で彼女は繰り返し「あなただったら何をしましたか?」と問い返します。
私たちはあの状況で自分ならどうしたかを常に問いかける必要があります。
作者は戦争犯罪を告発する運動に対して主人公の男性に「ぼくは当時、他の学生たちが自分を両親から切り離し、それによって犯罪者・傍観者・目をそらした者・許容者や受容者の世代から自分を切り離して、恥の感情とは言わないまでも、恥じることの苦しみを克服してしまえるのをうらやましく思ったものだった」と語らせています。
戦争犯罪を自分とは無関係のものとして断罪するのではなく、自分もひょっとしたらそのような状況に追い込まれるのではないかのと考える想像力が必要です。
私は一般市民が究極の状態に追い込まれないように戦争と虐殺の事態を回避する活動を、今この時点で進める必要があると考えます。

主人公の女性は読字障害でした。
そのために裁判でも自らを不利な状況に追い込んでいきます。
彼女にとって読字障害を他人に知られることは戦争犯罪者として重罰を受けることより耐えがたいことでした。
読字障害は学習障害の1つです。
基本的に全般的な知能発達に遅れはないが、読む能力の習得と使用に著しい困難を示すな障害です。
欧米では人口の5~10%(アメリカで2500万人、ドイツ400万人、日本600万人)が何らかの読字障害を抱えていると言われています。
著名人では俳優のトムクルーズやアンソニー・ホプキンスが識字障害を公言しています。
適切な教育・訓練で克服の可能性があります。
この障害で不幸な人生を送る人を出さないために、早期診断と療育が必要です。

久しぶりに面白い作品に出会いました。繰り返し味わいたいと思います。

熱中症を予防しましょう

熱中症とは?

熱中症は暑熱障害ともよばれます。
日常生活での熱ストレスが原因でおこる病気です。
熱中症による死亡は年200~500人にのぼります。
身近で、時に死にいたる危険な病気です。

熱中症の症状

高温(多湿)の環境にいた人が、発熱、多量の発汗(逆にまったく汗をかかない)、筋肉のけいれん(こむら返りなど)、頭痛、めまいや吐き気、全身の倦怠感、失神症状、意識障害、全身のけいれんをおこせば熱中症の可能性が高いです。
すぐに涼しい場所に移し、体を冷やし、水分を補給しましょう。
それでも改善がみられず、自力で水分が飲めなかったり、意識がもうろうとしたりしている場合は、医療機関を受診する必要があります。

熱中症の予防法は?

高温の環境をなるべく避け、熱が発散しやすい風通しがよい服装を心がけましょう。
室温が28℃を超えないようにクーラーを上手に利用しましょう。
運動は24℃を超えれば常に熱中症の危険があります。
給水対策を意識しておこない、31℃を超えた時は避けるようにしましょう。

熱中症を防ぐ、社会的支援が必要

私の所属する医療機関では熱中症の予防のために04年より毎年夏に熱中症のリスクの高い方の自宅を訪問しています。
経済的困難を抱えクーラーを使えない人、認知症で判断力が落ちている方が高温環境にうまく対処できていません。熱中症のリスクは社会的弱者に厳しく襲いかかっています。
社会的支援が必要です。

地域から熱中症死亡事例を出さないようにしましょう。

新型インフルエンザの大流行に備え肺炎球菌ワクチンの公費接種を

今回の新型インフルエザの病像が次第に明らかになってきています。
死亡例の多くは細菌性肺炎を併発していました。

成人の肺炎の第一の原因は肺炎球菌です。
それに対するワクチンが実用化されています。
感染症学会は予想される秋のインフルエンザ流行にそなえ「65歳以上の高齢者や慢性の呼吸器疾患並びに慢性心疾患、糖尿病などをお持ちの患者にはこのワクチン(肺炎球菌ワクチン)の接種を積極的に考慮して下さい」と提言しています。

アメリカでは65歳以上の方に対してワクチン接種が保険でカバーされているため接種率は70%と報告されています。
しかし日本では全額自己負担のため接種率は4.17%にとどまっています。
全額本人負担で接種すると七千円ないし八千円かかります。
全国約100の地方自治体では公費助成をおこなっていますが一部地域です。
国として肺炎球菌ワクチンへ公費助成することが必要です。

新型インフルエンザに対策は国民的課題です。
政府の決断を要望します。

9回目の近畿水俣病健診

「どうしてこれまで健診を受けなかったんですか」
「自分が水俣病とは思わなかった」
健診をするたびにいつも受診者とかわす会話である。
視野が極端に狭くなりまわりが見えない状態になっていてもそれが水俣病によるものとは考えない。
手足の感覚が鈍くなってケガをしても目で見るまでは気がつかない。
それも年のせいと思う。
内心はひょっとしたらと思っているが、自分が水俣病とは考えたくない。
それがほとんどの健診受診者のこころの内だ。

5月31日、9回目の近畿在住者の水俣病検診をした。
今回は15名受診ですべて水俣病と診断された。
9回合わせて223名が受診し188名(84%)の水俣病が確認された。
毎回これでそろそろ近畿でやる健診は終わりかなと思っているが健診の予約待ちはまだまだある。
チッソの引き起こした有機水銀汚染の被害の広がりの大きさに驚かされる。


体調の不調を抱えながら正しく診断されずに暮らしている人だまだまだたくさんいる。
国と自治体が汚染地域に居住歴のある人々の全員の健康を調査し、被害者を発見し、その人たちの救済を早急に行うことが必要だ。

すべてのA型インフルエンザと非A非Bインフルエンザ様疾患の全数把握を

大阪・兵庫で新型インフルエンザが広がっている。
海外渡航者に対する水際作戦で対処してきたが、その防衛線を突破されてしまった。
この間の教訓は海外渡航歴のある人に対象をしぼって対策をしてきたが。
大阪で海外渡航歴のない人にA型インフルエンザが多発していた高校があったのにそれを新型インフルエンザと診断するのに時間がかかってしまった。

国内各地のインフルエンザ感染者の流行を早くつかむために、A型インフルエンザ感染者とインフルエンザ様症状があってA型もB型も陰性の患者(検査の感度の関係で偽陰性の可能性がある)の全数を把握し流行地域を早くつかみ対策をうつ必要がある。
そのために医療機関に報告を義務付ける必要がある。

現在は全国約5,000のインフルエンザ定点医療機関を受診し、A型もしくはB型が陽性になった患者数が週ごとに把握されている。全数把握の体制ではない。定点報告によると今年は5月にはいってもインフルエンザ患者が多いことが注目されている。

当然A型インフルエンザ陽性患者の中に新型インフルエンザでない従来からある季節性インフルエンザ患者も含まれている。
しかし診断が確定するまでは感染拡大防止を徹底する。

感染拡大を抑える為にはこれが不可欠である。
厚生労働省のすばやい指示を要望します。

新型インフルエンザの正確な認識と対処

今回の新型インフルエンザはどのようなものか。そしていかに対処するべきか。混迷が続いています。
季節性インフレエンザと同じようなものと言いながら軽症患者でも隔離する方針を継続し、封じ込めが可能であるような幻想を依然もっていたり、一方では「もはや流行ではない」という知事が出たりしている。

今回日本感染症学会・新型インフルエンザ対策ワーキンググループからだされた提言をぜひ多くの国民に知っていただき、来るべき大流行に備えたいと思います。

社団法人日本感染症学会緊急提言(要旨 文責いけしん)
「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」http://www.kansensho.or.jp/
○今回のインフルエンザは軽症とはいえない
短期間に10 万人以上がICU に入院することになります。
今回の新型インフルエンザ(S-OIV)が今後大流行した場合、わが国の死亡者数や死亡率が香港かぜの場合(筆者注 8万人から9万人の死亡)を大きく超えるようなことはないと思われます。

○過去の我が国における新型インフルエンザ流行の実態から学んでください= 大流行が予想される
今回の新型インフルエンザ(S-OIV)が、現在は症状も軽く、患者数も比較的に少なくても、今年の秋か、冬に大きな流行になると専門家が警戒しているのは過去の大流行の事実からです。

○新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です=罹患を避けることは難しい
過去のどの新型インフルエンザでも、出現して1~2年以内に25~50%、数年以内にはほぼ全ての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっていきます。

○新型が流行すると青壮年層の被害が甚大となるのには理由があります=青壮年には免疫がない

○流行初期から一般医療機関への受診者が激増します=一般の医療機関の準備が大切

○重症例にはウイルス性肺炎よりも細菌性肺炎例や呼吸不全例が多く見られます=適切な予防対策と早期治療が重要

○一般予防策ではうがい、手洗い、マスクが効果的です

○医療従事者の感染予防にはサージカルマスク、手洗い等が効果的です

○全ての医療機関が新型インフルエンザ対策を行うべきです

舛添厚生大臣殿 新型インフルエンザ対策のために地域の医療機関支援を

地域の医療機関では新型インフルエンザに対処するために診療体制を強化しています。
患者さんからも「先生体に気をつけて頑張ってください」と声をかけてもらっています。
当院では発熱外来は開設してませんが、発熱患者を一般患者から分離して特別の待合室・診察室で診療する体制をとっています。
一日10名たらずの診療ですがインフルエンザA陽性の方はでていません。
地域の医療機関を支援するために以下の措置を緊急にとってください。

行政が備蓄している薬品・物品を早急に医療機関に提供してください。
検査キットも消毒液・マスクも底をついています。卸業者からも納入不納の連絡がきています。

医療保険制度を整備してください。
疑いのある人がすべて検査・医療を受けれるように、医療機関窓口での一部負担を免除してください。無保険者への配慮も必要です。

インフルエンザ検査は一回の検査では偽陰性になる確率が20%あります。
二回目の検査は保険適応がありません。
翌日の再検査も保険適応にしてください。

濃厚接触の家族その他にタミフルの予防投与する必要があります。
新型インフルエンザが確定した方の濃厚接触者に限って公から無料で提供されているようです。
しかし地域の医療機関でA型インフルエンザと診断された方の家族に予防投与しようとしても、保険適応がなく全額自己負担となります。
保険で予防投薬が出きるようにしてください。

新型インフルエンザ対策に力を入れると通常の診療を縮小する必要がでてきます。
それによる経済的損失の補填もぜひ検討していただきたいと思います。

至急の決断・実行をお願いします。

南京と広島の歴史的事実から学ぼう

南京で日本軍による虐殺があったことは、派遣軍の責任者であった松井石根大将の陣中日誌はじめ軍関係の資料、従軍した日本兵の証言、ラーベをはじめとする当時南京にいた外国人の記録からもみても明らかな事実です。

南京事件を声高に否定する論説がマスコミによって流布されています。
それに幻惑されている日本人が多くいます。
なぜ事実に向かいあえないのかそれが問題です。
被害者側に立って考える想像力がないからです。
真実はなにか自分の手で文献を読み、自分の頭で考える態度が欠けているのです。
「よくわからない」ではすまされない問題です。
現実に加害者と被害者がいるのですから。

日本だけではなく例えばアメリカでは、「広島への原爆投下は戦争終結のためには必要であった。」との意見が根強く広がっています。
日本の侵略被害にあった東アジアの各国では原爆投下の映像に拍手がおこるといわれています。
広島の悲惨を知る日本人には信じられないことです。
「原爆投下は戦争犯罪である」という事実に向かい合う必要があります。

世界中の人々の事実にもとずく歴史認識なしには今後の世界の平和と友好はありません。
世界中の人が南京をそして広島を訪問され歴史認識を深められることをおすすめします。

ディモルフォセカ

夜仕事から帰って玄関の花が閉じているのを見て非常に驚いた。
昨日の昼見た時は白い美しい花が咲いていたのに夜見るとすべて閉じていた。
ディモルフォセカという名前の花だ。
昼咲いて夜閉じる花があったのか。大発見をしたように感動した。

インターネットで調べてみると福寿草もタンポポもデージーもそして大好きなハクモクレンも昼花が開き夜閉じるそうである。
自分が知っている花も一日でそんな変化があることにこれまで気づいていなかった。

すぐなにかで調べるという知識に偏ったやり方そのものが問題なのかもしれない。
知識も大切だが体験や現実をありのままに受取りそれから学ぶことも大切だ。
さらには自分が現実をいつもありのままには見ていないことに気づいていることが必要なのだろう。

視野や関心が狭くなってこんなすてきなことを見落としていたのか。
そういえば先日の風も昨夜の月も素敵だった。
そんなことにことに気づかないで人生を送ってきたことがすこし悔しい気がする。
でもやっとそれがわかるように成熟してきたのかとも思う。

これからはいままで気づいていなかったもっと素晴らしいこともっと重要なことに気づくことができる気がする。
どんなことに気づけるか、楽しみである。

鳩山・桝添両大臣は感情むき出しの発言を慎んでほしい

最近、大臣などがテレビの画面で怒りをむき出しにして発言することが目立っている。

たとえば鳩山総務大臣。
草薙事件で、「めちゃくちゃな怒りを感じている。なんでそんな者をイメージキャラクターに選んだのか。恥ずかしいし、最低の人間だ。絶対許さない」と鬼の形相で降板を示唆した。
しかし翌日には世論の反発があり撤回された。

桝添厚生労働大臣。
インフルエンザ問題で横浜市長に対して「組織として危機管理の体を成しておりません。」「もし情報が(横浜市長に)上がってなければ、組織としての危機管理体制が成っていないということです。」と決めつけ、「上に立つ者がきちんとリーダーシップを発揮して危機管理をやらなければならないと思います」
と発言した。
後に横浜市長の冷静な事実にもとずく反論があった。

もう一つ、 桝添厚生労大臣。
新型インフルエンザ発生国への渡航歴がないにもかかわらず、発熱などした人が病院で診察を断られたケースにたいして「医師法違反だ。医者の社会的義務として対応してもらいたい」と、不快感を示した。
これも新型インフルエンザにたいして医療機関も患者もまだ十分に理解していない混乱のなかの現象であることが明らかになった。

公の場で怒りや不快が表現されるのはかってなかったことである。
感情にまかせて物事を断定する風潮が広まることは恐ろしい。
怒りのつぶてが飛び交う社会などまっぴらである。
とくに権力をもつものが事実にもとずき筋道をたてて発言しないと国民に誤った情報を提供したり、不適切な判断をさせることになる。
慎んでいただきたい。

フィンランドメッソドで紹介されている議論のルールの一つに「話すときに、怒ったり泣いたりしない」がある。
意見を述べる時に感情をむき出しにするのは控えなければならない。
議論の最中に参加者が他の参加者に対し怒りをむき出しに表現し会議が凍りついたことを経験したことがある。
両大臣はこのルールを覚えておいてほしい。

特に私が気になるのはこの二人の大臣が他人を一刀両断に切り捨てる発言をする資格が自分にはあると考えているように思われる点である。
日本国憲法前文には「国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」と記されている。大臣の権力は国民に由来する。
タレントも横浜市長も医師たちも国民の一員である。
それに対する批判は、慎重に事実を確かめ節度をもったものでなければならない。今は江戸時代ではない。

「久しぶりやな」これがいつもの最初の言葉である。
「先週来たやないか」と言うと、「そーやったかな」と答える。
私が行くまでは、テレビをつけているがうたた寝をしていたようだ。
最近は阪神の勝敗にも関心がない。

とろこで「○○ちゃんは何歳になった」孫の話である。
順番に孫の名前が出てくる。
食卓の前に貼った写真を見ながら順番に孫がどこに住んでいるのか、結婚しているのか、子供ができたのかの話になる。
そして最後にひ孫がまだ一人も生まれていないことを知ると。
私に「そうか。孫が一人も生まれなくてよかったな。おじいさんにならんでよかったな」と言う。

そして今度は私の年の話である。
「いけしんは何歳になったんや」「もう直ぐ60歳や」「もう60か。ところで私は何歳や」「91や」「へー91かびっくりしたなー。自分の年も忘れてしもうたわ」「ケンジロウはなぜはよ死んだんや」「早いことない80で死んだんや」「そうやったかなー」

これは91歳の母と私が毎週繰り返す会話である。
会った時に何回も何回も繰り返す会話である。

回想療法やリアリティーオリエンテーションという技法があることを知っている。
一応「もの忘れ外来」をする専門医の端くれの私だが自分の家族のことになるとなかなかそんなことはできない。
せめて母を笑わせる面白い話を一つはしようと思うのだがそれもうまくはいかない。
せめていやにならずに同じ話を何回も繰り返して聞くのが自分の務めだと思っている。
週1回行って話をするだけだからできるのかもしれない。
四六時中顔を合わせる家族なら「その話はもう聞いた」と嫌みの一つも言いたくなる。

食事をしてビールを飲んでテレビを見る。
そして寝る。
これが毎週1回の母親宅訪問である。

朝顔を合わすと「なんや泊っていたんか。ぜんぜん知らんかった。」
朝食をすませて帰る時になり、私が「また来週来るわな」と言うと。
「帰らんといて」と90を超えた老人とは思えない若々しい感情の入った声を出す。
母の両肩を抱き「また来るな」と言い残して家をでる。

車のリアウインドウから後ろを見るといつまでも母が手を振っている。
まるで「伊豆の踊りの子」の娘のように。
死んだ父の代わりは到底できないが、母のかわいい幼い息子役も青年の息子役も壮年の息子役もできそうである。
「また来るな」

世界の力を結集するために新型インフルエンザサミット(H1N1)を

メキシコに2日、日本からの支援物資が届いた。
マスク19万枚や手洗い用消毒液約1400本など2100万円相当。引き続き1億円相当の支援物資が贈られることになっている。
中国も4億8千万、世界銀行も25億円の支援をすると報道されている。
非常に喜ばしいことである。

WHO事務局長マーガレット・チャンは声明で「過去の経験から、インフルエンザウィルスは豊かな国では比較的軽い症状の病気を起こすにとどまりますが、途上国においては死亡者を伴う深刻な事態を引き起こす事がわかっています。どうような状況であれ、国際社会は、今回の出来事を危機に対する備えと対応力を強化する機会と捕らえるべきです。今こそ、国際社会が一致団結する機会であり、全ての国の全ての人のための、危機対応策と解決策を模索していくべきです。なぜなら、パンデミックにおいては、全世界の人々が等しく脅威にさらされているからです。」((2009年4月29日)と述べています。
今この時期に自国民だけを守ろうとしても、自国民すら守れない。
国際社会が一致団結する時である。

先進各国の感染対策がすすみ一路パンデミックへの危険はやや落ち着いた感はあるが、経済的・技術的弱者の国の対策の進展が気がかりである。
とくにこれから秋から冬に向かう南半球諸国の支援を世界規模の協力で行う必要がある。

保健・医療・財政・経済に及ぶ世界的対策はWHOの役割を超えるものである。
日本政府は世界各国に対して新型インフルエンザ(H1N2)サミットの開催を呼びかけることを提案する。

日本はメキシコに必要な支援を直ちに

 新型インフルエンザ問題で緊張が広まっている。
私の所属する病院診療所でも、対策員会を発足させ「海外渡航者の発熱患者の患者対応を」再確認し、必要物品の確保に動いている。
私も日本で働く医師として医療人の使命を遂行したいと決意を固めている。
日本政府も27日「当面の政府対処方針」で情報収集強化と水際でウイルスの侵入を防ぐ方針を出した。
その一環で外務省は27日、豚インフルエンザの被害が深刻なメキシコに滞在する在留邦人向けに、インフルエンザ治療薬タミフル2330人分とマスク8400枚を緊急輸送した。

私は日本政府に一番の感染国であるメキシコ支援を急ぐことを提案したい。
WHOが指摘するように感染封じ込めは困難な状況になってきている、感染被害を最小限に抑えながら流行を終焉させることが課題である。
そのためにはメキシコの流行を制圧することが不可欠である。
自国民を守るためにもメキシコ支援が必要である。
日本として必要な人員や資材を送るという立場を表明し、まず在留邦人だけではなくメキシコ国民が必要とするタミフル・マスクを日本国の備蓄の一部を割いてでも送るべきと考える。

清水由貴子さんの自殺と日本の介護

清水由貴子さんの自殺が注目を集めている。
報道によると自殺の4日前にはケアマネージャーを中心に関係者6人が、由貴子さんの家に集まってサービス担当者会議を開いていた。
その会議に由貴子さんも出席していたが介護に悩んだり疲れたりなど、特に変わった様子はなかった。
また由貴子さんは、「ありがとう」と感謝の言葉を述べていたそうである。
「ありがとう」という言葉の背後にある介護者の苦しみに我々がどれだけ気づいているのか、医療介護に携わる者ととして反省させられる。

介護が家族の負担になっている現実が依然としてある。
要介護者の介護の責任が本人にあり自己責任で介護を買う必要があるのか、家族が身を犠牲にする必要があるのか、それとも社会にあるのか根本点を明確にする必要がある。
かって日本型福祉社会が唱えられ家族が親の介護をするののが日本の美風だといわれた。
しかし介護自殺や介護殺人・心中がおこる今の日本の現実は、介護の責任は社会にあることを明確にしている。

憲法25条は「1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定している。
すべての国民は、尿や垢にまみれたり、介護で疲労困憊する生活を拒否し、健康で文化的最低限度の生活を要求する権利がある。
そして国はそれを保障する義務がある。

2000年に導入された介護保険制度も介護分野における憲法25条の精神の実現には程遠い。
入所する施設がないなどサービス供給量の絶対的不足、高額の利用料負担による経済的制約、実態に見合わない介護認定制度による利用制限等々。
腹立たしい実態である。

なんとしても国民の健康で文化的な生存権を保障する介護制度を作り上げたい。

由貴子さんご苦労様でした。

ソマリア海賊問題は日本国憲法の平和主義の原則で解決しなければならい

 日本国憲法は憲法前文で二つの決意を明確にしている。
「われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」である。
ソマリア周辺で頻発する海賊行為は日本国民を含む諸国民の安全への脅威である早急に解決しなければならない問題である。
日本は憲法の精神に立ち戦争ではなく平和的に、平和を愛する諸国民の公正と信義に依拠しそれを強める方向で解決しなければならない。

ソマリアの海賊問題の根本原因は、1991年以来ソマリアが事実上の無政府状態になっていることである。
ソマリアに対して国際的な民生支援を強化し安心して暮らせる秩序ある国にすることなしには解決しない。
海賊に対するソマリア国外からの武器その他の物資の流れを断つことが重要であり、ソマリア周辺諸国の警察力の強化に援助をすることである。

また直接的にソマリア沖を航海する商船を海賊から守ることが重要である。
海賊という明白な犯罪行為に有効に対処しなければならない。
国内・公海上の国民の生命・財産・公共の秩序を守る行動は明らかに警察活動である。
これは憲法で禁じている戦争行為とは明らかに異なるものである。
その内容は警備・警護であり捜査・逮捕の枠内でなければならない。
相手にたいして先制攻撃をかけたり、せん滅するようものであってはならい。
さらには危惧される相手根拠地に対する空爆などは明らかな軍事行為になる。
そのような行為に加担することは日本国憲法に反することになる。

海賊対策の警察行動を行う任務を担うのは海上保安庁であり、自衛隊ではない。
海上保安庁はマラッカ沖での海賊対策の実績もありそのノウハウを発揮してもらう必要がある。
海上保安庁は、日本国憲法の軍備放棄の立場を踏まえ、海上保安庁法第二十五条で「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」と規定されている。
海賊がロケット砲を装備しているから巡視船では対処できないとの意見があるが、装備の問題は装備強化で解決すればいい。
海賊対策でも戦争は絶対しないというのが日本国憲法の立場である。
戦争目的で組織されている自衛隊はただちにソマリア沖から撤退させなければならない。

現在議論されている海賊対処法案でも、海賊対策は原則海上保安庁がおこなうとしている。
これは海賊という犯罪対策では当然のことである。
海賊対処法をあらためて制定する必要がない。
しかし法案は特別な場合に自衛隊が当たるとしている。
真意は戦争行為をおこなうために自衛隊を派遣するというのである。
これは明らかに憲法違反だ。
法案に反対である。

2008年12月16日に国連の安全保障理事会で採択されたソマリア情勢に関する国連安保理決議1851は、ソマリア沖の海賊行為の防止に向け、ソマリア領内で必要とされる「あらゆる措置を取ること」を全会一致で承認した。海賊行為の防止に向け「領空も含め、ソマリア陸上で必要とされるあらゆる措置を取ること」ができるようになっている。
「あらゆる措置」とはソマリア領土内への軍事進攻、空爆も含むものである。
そのような事態になればソマリアの一般民衆の多大な被害が出ることになる。
ソマリアの悲劇が一層拡大することになる。
国家の論理ではなく、個々の民衆の顔を頭に浮かべた行動をしなければならない。
安保理決議1851の実行を許してはならない。
日本国憲法をもつ日本国民は平和主義の立場で、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼しソマリア問題を平和的に解決できるよう奮闘しょう。

ピロリ菌の検査・治療に保険適応を


 ピロリ菌の研究者・専門医のあつまりである日本ヘリコバクター学会は平成21年1月、すべてのピロリ菌陽性者に対し除菌(ピロリ菌を殺菌する治療)を推奨する内容の新ガイドライン(「ピロリ菌感染の診断と治療のガイドライン2009改訂版」)を発表しました。
ガイドラインに基づきすべての人が治療を保険で受けられるようになることが望まれます。

ガイドラインの大きな目玉は、ピロリ菌の除菌が胃・十二指腸潰瘍の治癒・再発予防だけでなく、胃がんをはじめとするピロリ菌関連疾患の治療や予防に有用だとしたことです。
具体的にはピロリ菌除菌治療の対象となる疾患として胃・十二指腸潰瘍をはじめ、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃、萎縮性胃炎、胃過形成性ポリープ、機能性ディスペプシア、逆流性食道炎などを挙げています。
つまり除菌対象者をピロリ菌陽性者すべてに拡大したのです。

わが国では40歳以上の大半の方がこのピロリ菌に感染していると考えられています。
感染経路は明らかではありませんが子どものころに水などを通じて口から感染したと考えられています。衛生状態の改善により若い人の感染率は低くなっています。
それでも日本国民の半分にあたる約6千万人の方が感染していると推定されています。
成人してからの感染はないとされています。

現在ピロリ菌の感染を調べる検査は胃潰瘍や十二指腸潰瘍がある人、またはあった人だけが対象で、治療は潰瘍を再発する人に限られています。
それ以外で検査や治療を希望する方は保険外で、自費で検査治療することになります。

ピロリ菌感染の有無を調べる検査は、胃カメラを使う方法と試薬を飲んでから呼気を集めて分析する方法などがあります。
治療は制酸剤・抗生物質などの三種類の薬を1週間服用することになります。

最近の研究ではピロリ菌は胃炎や胃潰瘍のほかに、胃癌や胃のリンパ腫などの病気にも関わりがあることがわかっています。
現在日本では胃癌で毎年約5万人の人が亡くなっています。
ピロリ菌を除菌することによって胃癌が予防できる可能性が高いとされています。

学会のガイドラインにもとづき、希望する方の検査が公費ででき、すべてのピロリ菌陽性者の治療が保険でできるようになることが求められます。

WBC日韓戦終了後、両チームはエールの交換をしてほしかった

 スポーツでの日韓はよきライバルお互いをたたえ合い切磋琢磨しよう。

WBCでの日本チームの2連覇で日本中が沸きかえっている。
WBCの奇妙なルールにより日本は韓国と5回対戦し3勝2敗となり、日本が1位韓国が2位となった。
韓国チームは非常にパワフルで、どちらが1位になってもおかしくなかった。
近年、野球だけでなくサッカーでもアイススケートでも日韓がライバルとしてお互いの力を競い合うようになっている。
非常にうれしいことだ。

テリー伊藤氏はテレビ番組で「ボクは韓国に感謝している。日本が強くなったのも韓国がいたせいですよ。韓国が頑張っていなければ、日本はアメリカに負けていたかも……。」(http://www.j-cast.com/tv/2009/03/25038188.html)と述べている。

同感だ。
隣り合う両国が切磋琢磨し合うライバルとしてあることは非常に喜ばしいことだ。
しかし競い合うことが偏狭なナショナリズムを刺激して、「韓国(日本)だけには負けたくない」との風潮が感じられることに困惑している。

asahi.comは日韓両国のプロ野球で活躍した新浦寿夫氏のコメントを次のように伝えている。
「気がかりなのは、今大会でも、2次ラウンドで日本に勝った韓国がマウンドに国旗を立てるなどしたことだ。ライバル心が以前のままのように見える。対する日本も平常心で戦えていないようだ。『どうして特別な感情が試合を支配するのか』と寂しく思う。」 (http://www.asahi.com/sports/update/0324/OSK200903240035.html

歴史認識を明らかにした上で、お互いの今を尊重・尊敬しあう関係が大切だ。

そこで一つ提案する。
野球も国際大会では、試合終了がサッカーやラグビーの様にお互いが握手をしあい称え合うことを習慣にしてはどうか。
気持ちがなければ意味はないかもしれないが、まず形から入ることも大切と思う。
次の対戦ではそうなることを願っている。

産経新聞と南京大虐殺記念館

 産経新聞は08年12月17日「南京大虐殺記念館、信憑性乏しい写真3枚を撤去」と報道した。
それに対し侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館(南京大虐殺記念館)は「昨年(注07年)12月13日の新館拡張後、写真の入れ替えは1枚もない。産経新聞が下心をもって事実を捏造し、本館の名誉を毀損したことに、強烈な抗議を表明す!」との声明を出した。
今度はこれに対し産経新聞が見解を表明する番である。

「中国・南京市にある南京大虐殺記念館が、信憑(しんぴょう)性が乏しいと指摘されていた写真3枚の展示を取りやめたことが17日、政府関係者の話で明らかになった。」(産経新聞)「中国が同館の展示について“是正 ”に応じたのは初めて。ただ、30万人という犠牲者数の掲示や“百人斬(ぎ)り”など事実関係の疑わしい展示多数はそのままになっている。」(産経新聞)

「南京大虐殺記念館の朱成山館長は、この件について次のように述べた。(中略)新館にこれら3枚の写真を陳列したことはそもそもなく、オープンから1年経っても1枚の写真も入れ替えておらず、日本外務省からの通知を理由に写真を撤去したような事実は全くない。新館に陳列している3500枚の写真は中国社会科学院、江蘇省社会科学院、北京大学、南京大学、南京師範大学などの学術機関の数十人の専門家が繰り返し論証し、日本側の専門家にも1枚1枚考証してもらったもので、どの写真も歴史の事実に符合する。」(人民網日本語版08年12月23日)

お互いに事実を確認しながら共通の認識をつくることが大切である。今度は産経新聞が事実を提起し反論しなければならない。出来なければ誤報として訂正記事を潔く出すべきである。

南京事件の現場に立って

 南京に来ています。
南京虐殺事件の現場に立ちその3次元的位置を体験したかったからです。
多くの避難民が逃げ込んだ安全区、安全区主席のラーベ氏の自宅、多くの女子を収容した金陵女子文理学院、虐殺の主な現場である揚子江河畔の下関等々に行きました。
また虐殺現場の一つに建てられている「侵華日軍南京大虐殺遭難同胞紀念館」を訪問し展示を見ました。
展示の数は非常に多く、半日では見学しきれませんでした。
写真は発掘された遺骨の展示の一部です。

紀念館では館長の朱成山さんと自身が12歳の時に日本軍のレイプにあった張秀紅の話を聞かせてもらいました。

朱館長は「(多くの日本人に)ぜひ南京にきて展示を見てほしい、話し合いたい。『虐殺はなかった』と言う人も歓迎です。」と述べられました。
また「数年前中国の各地で反日デモがあったとき南京ではデモが起こらなかった。これはこれまでの南京事件に関する交流を通じて、過去を反省し日中友好と平和を願う日本人が多くいることを南京市民が知っているからです。」と言われました。

張さんは84歳の女性で当時南京城外に住んでおり日本軍がやってきて農民である父親は兵士の疑いがあるとして殺され、自身も4度にわたりレイプされた体験や目撃した虐殺のいくつもの様子を話されました。「若い人は今後このような戦争は起こさないように、これからは友好的につき合いたい」と述べられました。

わたしのまわりにも「南京虐殺事件はほんとうにあったのでしょうか」と言う人がいます。
事実を知ることが大切です。
何冊かの本を読み、なかったという人の意見を含めてよく知り考えることが必要です。
「よくわからない」ではすまされない問題です。
現実に加害者と被害者がいるのですから。
日本人の、事実にもとずく歴史認識なしには今後の東アジアの平和と友好はありません。
ぜひ南京を訪問されることをおすすめします。

医師臨床研修制度の拙速な改定に反対します

 報道によると、厚生労働省と文部科学省の検討会が医師臨床研修制度についてを改定する提言をまとめました。必修の診療科目を大幅に減らし、2年の研修期間を実質1年に短縮できるよう見直す内容です。現在は、内科、救急、地域保健・医療、外科、産婦人科、小児科、精神科の7診療科が必修となっています。それを、必修は内科、救急、地域医療の3科に減すというものです。2年目から、将来専門にしたい診療科に専念できるようになるというものです。
改定の目的は、現場の医師不足解消としています。
研究者や専門医の養成を目的とする大学病院に研修医を呼び戻しやすくして、即戦力として活用する効果が期待を期待しているのです。

たしかに大学病院の医師不足は看過できない問題です。
その対応として大学病院が地域の病院から医師を引き上げたことが現在の地域医療崩壊に拍車をかけています。
しかし医師不足は大学病院だけではなく日本の全医療機関の問題です。絶対的な医師不足が根本原因です。
医師研修制度を手直しして地域の臨床研修病院から大学病院に医師を集めれば、臨床研修と地域の急性期医療を合わせて担ってきた地域の急性期病院の運営は窮地に陥り地域医療崩壊はいっそう加速されることになります。

現行の臨床研修制度は平成16年に発足しています。
それに先立つ平成6年医療関係者審議会臨床研修部会中間まとめ「基本的には臨床研修を必修とすることが望ましい」旨の提言をうけた10年間の議論によって創り出されたものです。

平成14年10月の「新たな医師臨床研修制度の在り方について(案)」は「医師には患者の健康と疾病についての全体を診ることが期待されており、特に小児や高齢者に対しては、医師と患者及びその家族との間での十分なコミュニケーションの下に総合的な診療が行われることが必要である。」との認識の下、「適切な指導体制の下で、効果的に、プライマリ・ケアを中心に幅広く医師として必要な診療能力を身につけ、人格を涵養する研修である必要がある。」としました。
現行の研修制度はその考え方に基づいて発足しました。
5年間の実践は、臨床研修病院に医師を育てる課題の重要性を浸透させました。総合的に内科、救急、地域保健・医療、外科、産婦人科、小児科、精神科を研修した、私のまわりの研修医の成長をみれば一定の成果があると言えます。
今回の改定案はその考え方を転換し、総合的な視野をもつ医師の医師の養成を困難にするものです。

「臨床研修は、医療という社会的重要性、公共性の高い事の必要不可欠な要素であり、医師個人の技術向上ということを越えて社会にとっての必要性が強いもの」(「新たな医師臨床研修制度の在り方について(案)」)です。
国民にとってどのような医師をが必要なのか、現行の臨床研修制度は何を目的として開始され、5年間の実践の結果はどのようなものであるか、成果は何か、問題点は何か、改善をどうするのか議論を、医療関係者・医学生・研修医・国民の意見を集めて慎重に結論を出すべきです。
拙速な結論を出さないことを強く要望します。

メジロ

庭にメジロが来るのを楽しみにしている。
みかんを半分に切って枝にさしておくとメジロが食べに来る。
ガラス戸越しに見ているとかわいい目をしたメジロがやって来る。
数羽一緒に来ることもある。
写真を撮ろうと戸をあけるとたちまち逃げてしまう。
時にはおおきな体の、魚のような尾をもつヒヨドリもやってくる。
ヒヨドリを見つけると、思わず「あっ、ヒヨだ」と追い払ってしまう。
見た目でこんなに差別されるヒヨドリもかわいそうだ。

ふだん昼間は家にいないので鳥の姿を見ることはできない。
でもみかんの食べカスを見ると誰が来たかわかる。
みかんの房をきれいに残して実だけをくりぬいていると「メジロが来たんだな」と思う。
外側の皮だけが残っていると、「あっ、ヒヨか」と思う。
鳥によって食べ方がずいぶん違うものだ。

17年間飼っていた犬が去年の暮に亡くなった。
まだ小屋はそのまま置いている。
どうしているのかと小屋のなかをのぞき込んでしまう時もある。
いまでも小屋から出てきそうな気がする。

その小屋のそばの木にみかんをつけている。
メジロであれヒヨであれ、私を待ってくれているものがいることはうれしいことだ。
今日もまたミカンをつけよう。
おいしいミカンだよ。

33年間勤めてきたきた私の病院が今日から診療所になりました

 33年間勤めてきたきた私の病院が今日から診療所になりました。
1962年から病院として地域医療をしてきた病院が、医師不足と経営困難のためベッドを返上し無床診療所に転換しました。

医療崩壊と世間で話題になっていますが、それが私のところでも現実になったのです。
この3年間で5名の医師が退職し、加えて1名は同一法人の総合病院に異動になっています。
残ったのは常勤2名と嘱託1名です。
まさに医師体制の瓦解による病院崩壊です。
退職理由は様々ですが、勤務が過密でもっと余裕のある生活がしたい、開業して自分で医療をやってみたいというところです。
世間の医師の退職理由とほとんど変わりません。

虎の門病院の小松秀樹医師のいう立ち去り型サボタージュです。
それは医療現場での過酷な労働条件と過大な責任、患者からのクレームによって労働意欲を失った医師や看護師が医療機関を離れることを指しています。
これまで労働基準法以下の過酷な環境にあってもそれに医師としての使命感から我慢し耐え忍んできたが、もう我慢ができないと退職しています。
小松は最近の医療従事者の退職には日本の医療の現状ににたいする抗議の意味が含まれていると指摘しているのです。
閉塞状況に勤務医を追い込んだことが、医療を崩壊させているのです。

昨日、診療所として再出発する集いを院内で開催しました。
職員のみならず、患者さん地域住民、そしてOBが参加してくれました。
異口同音に言われたのは、悔しいが引き続き頑張ろうとの言葉でした。
医療現場をこんな状況に陥れた政府の医療政策の転換を涙をながしながら訴えられた方もいました。

私は引き続き現場に残り勤務医としてやっていきます。
私とて過密勤務と無縁ではありません。いつまでやれるのかと聞かれれば、「まだやれると思う」としか言いようがありません。
しかし現状を耐え忍ぶのではなく、地域の患者さん住民の皆さんの期待に応え続けることの喜びをしっかり味わいながら、息が切れない程度に頑張っていきたいと思っています。
そして医療従事者を現場から退去させる現行の医療政策を転換する運動ほどやりがいのあるものはありません。
今転換しなければ日本の医療は崩壊します。
必ず主権者である日本国民は医療再生の道を選ぶと確信します。
その運動を楽しんで取り組みたいと思います。

「派遣村」は救済援護運動における長篠の戦いです

 年末年始、「年越し派遣村」に注目が集まりました。
多くの人が失業と貧困の問題を何とかしなくては考えるようになっています。
そして「派遣村」の取り組みは川崎、福岡、岩手、佐賀など全国に広がっています。

その運動は無策な国の動きを待つことなく、地域の草の根の連帯で困っている人を救済しようとする運動です。
阪神大震災以降続くボランティア精神にもとずく助け合いの運動を引き継ぐものです。

さらに派遣村の運動は、救援活動だけではなくこの国のセーフティネットのありようを問うものになっています。
今回の運動が生活保護の運用を大きく変えることになりました。
これまで生活保護を受けるためには住所がないとダメとされていました。
住所のない生活困窮者は申請を拒絶されてきました。
今回の「年越し派遣村」集まり生活保護受給を申請した250人を超える全員の受給が認めさせることができました。

日本国憲法25条は「第一項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。第二項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と明記しています。
会社の都合で突然解雇され、収入と住宅を失い路頭に迷うことを放置することを憲法は認めていません。
国には国民の健康で文化的な生活を保障する義務があるのです。
憲法に違反する事態があれば国民が国に要求する必要があるのです。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」(憲法12条)

「派遣村」の運動は、憲法に照らして今の社会のありようが放置されていいものかどうか考えるきっかけになっています。
憲法をくらしに活かす。憲法を運動の根拠にする。
そのことが始まっているのです。

1543年種子島に伝来した鉄砲は、1575年織田信長が長篠の戦いで多量に組織的に使用したことによって戦国の戦いの流れが変わりました。
1947年施行された日本国憲法は2009年国民の生活を守る根拠として活用され始めています。
憲法を知りそれを活用しようとする運動が大きくなっているのです。
憲法がこの国のありようを変える力になりつつあるのです。

基本的人権である生存権が保障される社会を実現するために運動を進めましょう。

橋下知事の高支持率と在阪マスコミ

読売新聞の調査によると就任一年の橋下知事を「支持する」とした回答は82・3%で、「支持しない」の9・5%を大きく上回っています。
「政党支持別にみると、全体の4割強を占める無党派層で79%となり、府議会で知事与党の自民支持層は92%、公明支持層も9割近い。野党も民主支持層が83%で、共産支持層も5割が支持した。」とのことです。

01年5月に発足した小泉内閣が9カ月目の02年1月まで70%から80%の支持率を確保していたことに並ぶ結果です。

読売は支持理由(複数回答)では「指導力がある」(59%)が最も高かったとしています。
同様の調査を行った毎日は、支持する理由を「『政策に期待できるから』が38%で、『発言が分かりやすいから』も30%を占めた。」と報道している。

橋下知事は、小泉内閣の初期に匹敵する支持があります。
政党として明確に橋下知事に反対している共産党の支持者でもかなりの人が支持しています。
つまり小泉構造改革による格差と貧困の現実に反対し変革を期待する人たちを含めて橋下知事知事を支持しているのです。
その理由が「指導力」・「政策」・「発言がわかりやすい。」です。

小泉元首相と橋下知事の手法は非常に似ています。
マスコミ目線の発言、「行財政構造改革」と「財政再建」、「自民党をぶっつぶす」と「霞ヶ関をつぶす」等々。
二番煎じでもここまでやれるということです。
橋本知事の財政再建が実行されれば府民の府民のいのちとくらしは脅かされ、支持が下落することは明らかです。
小泉内閣の高支持率の帰結が現在の麻生内閣の超低支持率であることをみればわかります。
しかし府民に大きな被害が出てからでは遅すぎます。

多様な意見が存在するはずの民主主義の世の中で80%超の支持はある種の「でっち上げ」ではないかと思います。
大政翼賛会的不健全さを感じます。
何らかの世論操作がなければ実現しません。
橋下知事の高支持率をつくっている大きな要因は、テレビをはじめとする在阪マスコミの橋本知事応援の大合唱です。
この間の知事就任1周年のワイドショーの過熱ぶりをみても明らかです。
批判的検証の報道は一つもありませんでした。
これも小泉内閣時代に似ています。
現在、全国レベルではマスコミは「派遣村」報道に見られるように構造改革の犠牲者の姿を報道し、セーフティネット」崩壊した日本の告発をしてます。
しかし在阪のマスコミは橋本知事を礼賛一辺倒の報道をしています。
マスコミの批判精神はどこに行ったのでしょうか。

府民は現状の変革を求めています。問題は誰のためにどう変えるかです。
「格差と貧困」に苦しむ大阪府民に橋下改革を実行すればどうなるのかを深めた報道をする時です。
今こそマスコミの見識が問われています。

安部彩著「子どもの貧困」を読んで

「子どもの貧困-日本の不公平を考える」(安倍彩 岩波新書)を興味深く読みました。
ぜひ多くの人が読まれることをお勧めします。


この本は日本の貧困はOECD諸国の中でワースト2位であるという事実を、データをもとに実証的に提示しています。
その貧困は子供のなかに健康、学力、そして大人になってまで続く格差になっています。
この現実を自己責任で乗り越えろと切って捨ててはいけません。
貧困の世代間連鎖を断たなければならないと大多数の国民が考えていることでしょう。


本の中で私が衝撃を受けたのは、「子どもの必需品に対する社会的支持の弱さ」との安倍の指摘です。


安倍は08年にインターネットを通じて「現在の日本の社会においてすべての子どもに与えられるべきものにはどんなものがあると思いますか」を、20才代から80才代までの一般市民1800人に問いました。
調査は、「12歳のこどもが普通の生活をするために、○○は必要だと思いますか」と問いかけ、「希望する子どもには絶対に与えるべき」「与えられたほうが望ましいが、家の事情(金銭的など)で与えられなくてもしかたがない」「与えれられなくてもよい」「わからない」から選択するものです。


結果はイギリスと比較して必需品に対する支持が低いものでした。
例えば「お古でない靴」イギリスでは94%が必要としてるが、日本では40%です。


私がとくに驚いたのは、「朝ごはん」「医者に行く」「歯医者に行く」ことが絶対に与えるべきとする人がそれぞれ 91.8%,86.8%,86.1%であった事実です。
たしかに圧倒的多数の人はこれら三つの事項は絶対に与えるべきと考えていますが、10%前後の人は必ずしも与える必要はないと考えているという結果です。


たしかに90%の人が絶対に与えるべきあるとしたことは、日本の国柄を定めた日本国憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」が日本社会にたしかに根ざしていることを示しています。


でも10%の人はそうは考えないという結果は衝撃です。
個人の意見は自由です。
義務教育は受けられなくても仕方がないとする人は限りなくゼロに近いでしょう。
でも現在の日本で朝ごはんが食べれず、病気になっても医者にかかれない人がでてもしかたがないと考える人が10%もいるのです。そんな達はどんな人なのか非常に興味があります。富裕層に近い人かもしれません。
案外貧困層の人かもしれません。
そんな人たちは自分や自分の子や孫がそんな状況になってもしかたがないとするのでしょうか。
著者の今後の掘り下げを期待します。


この本を読んで私は日本の貧困の現実は必ず解決しなければならない、そのためにも各人が生活と労働の現場から声を上げる必要があることを痛感しました。
そうしなければ、「これでいいんだ」「しかたがない」とする人を変えることはできないと思いました。


私は幸せをもとめます。しかし自分も「しかたがないと」と切り捨てられる可能性がある中では、幸せを味わうことはできません。私は人の不幸の上になりたつ幸せなら拒否します。

特定健診・特定保健指導は何をもたらしているのか

08年4月より導入された特定健診・特定保健指導は10ヶ月が経過しその問題点が明らかになっています。
厚生労働省は早急に実施状況を集約し、国民に情報公開し国民的議論を起こし国民の健康増進のための健診・保健指導のシステムを再構築する必要があります。
私は、後期高齢者医療制度とともに問題の多い特定健診制度を廃止しひとまず老人保健法にもとづく健康診査に戻すべきであると考えます。


メタボリック症候群に焦点を絞った健診の有効性に疑問があります。
津金昌一郎・国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部長は「がん、循環器疾患を減らすには、肥満対策より、まず禁煙、節酒を推進することが重要。国民全体の健康対策として取り組む場合、肥満中心の手法は適切ではない可能性がある」と、肥満改善を重視する現在の特定健診(メタボ健診)に疑問を投げかけた。米医学誌電子版に発表した。」(09年1月30日毎日新聞)


他の癌検診の後退を引き起こしています。
「(特定健診への)国の補助単価が実費に届かない自治体が8割近くあることも判明。がんなどの他の検診への補助を削減する自治体もあり、メタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)以外の対策が後退し始めた実情が浮かんだ。」(08年7月27日毎日新聞)


さらにかかりにくさから受診率が極めて低いものになっています。
07年まで老健法にもとづく健康診査では、住民票さえあれば受診が可能でした。
しかし特定健診では、保険者から送付される受診券がなければ受診できません。
それが受診を妨げる障壁になっています。
08年度は保険者によっては受診券の送付が秋になったところもありました。
また受診券を紛失する事例も発生しています。堺市の国民健康保険被保険者の特定健診受診率は08年11月末で13.4%です。特定健診とは別の制度である癌検診も低迷しています。
堺市の大腸癌健診は昨年比62.7%に減少しています。
複数の健診を同時に受けることが一般的で特定健診の不振が癌検診の足を引っ張っているのです。

このような状態で、厚生労働省は5年後には65%から80%の受診率を実現することができると考えているのでしょうか。
メタボリック症候群対策で国民医療費を2兆円減らせると考えているのでしょうか。


行政の施策がなんらの成果を上げず総括もされてかったことを何回も見てきました。
「寝たきり老人ゼロ」「健康日本21」「ゆとり教育」等々。
公的健診は国民生活に重大な影響を及ぼすものです。
また国民医療費にも影響を及ぼすものです。
国民的な議論が必要です。
そのためにも実態が情報開示される必要があります。

無料低額診療事業

私の所属する医療法人の病院診療所では医療保険がないあるいは医療保険があっても一部負担が払えない人を対象に無料低額診療事業を開始する準備をしています。
健康保険では割引診療をすることが禁止されています。
計画しているのは社会福祉法第2条第3項の9「生計困難者のために無料又は低額な料金で診療を行う事業」です。


医療を受ける金のないすべての人が生活保護で医療扶助を受けることができるわけではありません。
収入が生活保護基準でも資産があったり住所がなかったりすると生活保護を受けることができません。
生活保護水準より若干収入が多くても一部負担を払えない人がいます。
また無保険の人もいます。
そのような人を援助するのがこの制度です。


全国260院所(大阪で25院所)がその事業を実施しています。
しかし十分に機能しているところは少ないです。
すべてが公益法人で法人税・固定資産税が免税になっています。
それを無料定額診療事業の原資としています。
行政の見解では私の属するような医療法人では事業を実施しても免税としないとしています。
その現状も理解しながらお金がないために医療を受けることができない人を援助するためにこの事業を実施したいと考えています。


2年連続赤字の私の法人が財源的裏付けのないこの事業に着手することは「風車に立ち向かうドンキホーテ」みたいだと言われるかもしれません。
しかし医療を受けることのできない病人がいる以上、現行制度を活用して援助していきたいと考えています。
当面は事業に要した費用については広く義援金を募って賄いたいと思います。
また行政が医療法人に対しても公益法人と同様に税の減免を行うことを要望します。


今の世の中皆が安心できる公的セイフティーネットを張り巡らせる必要があります。
すべての個人・組織に相応の社会的責任を果たす行動をすることを呼びかけます。 

志位委員長とビジネスクラス

 1月19日テレビ東京系で放送されたカンブリア宮殿を見ました。
共産党の志位委員長が出演して共産党の考えを端的に説明され興味深かったです。
志位氏は、マルクスが『資本論』で、資本は社会によって強制されなければ労働者の健康も寿命も何ら顧慮せず、無制限の利潤追求に走ることを指摘していると紹介し、日本共産党はルールある経済社会をめざすとの表明に共感を覚えました。


その中で、飛行機はどんな席に乗るかと質問された志位氏は躊躇せず「ビジネスです。」と応えました。
それを聞いて、「そうか志位さんはビジネスに乗るのか」と妙に感心してしまいました。
少し考えれば警備上もまた搭乗中も仕事を続けるためにはエコノミーでは無理なことはわかります。
画一的な社会ではなく多様性を認める社会をめざす立場からは座席の選択枝があるのは当然でしょう。


ただ私はエコノミーとビジネスがあまりにも料金・環境が違うことが気になります。
ヨーロッパ往復で正規の割引運賃で5万7000円と47万9000円で実に8.4倍です。
これは新幹線の東京大阪片道でグリーンと普通指定が1万9190円と1万4050円の1.37倍とくらべても桁違いに高いです。
この料金の格差は、自費で飛行機を利用する一般市民はマイレージでも貯まらなければビジネスを選択することはほとんどありません。


その一方で周知のようにビジネスとエコノミーでは環境が極端に違います。
エコノミーの環境が悪すぎのです。それはエコノミー症候群の病因になるほどです。
3人がけの窓側に座ろうものなら12時間以上トイレにも行かずに座りぱっなしの時もあります。
現状のエコノミーは「健康で文化的環境」とはほど遠いもので基本的人権を侵害するものです。 エコノミーの環境の悪さは日本の航空会社だけではなく世界共通のものです。誰がどんな基準で座席幅を決めているのかも情報開示されるべきです。


飛行機で移動することは特別のことではなく一般市民の基本的権利です。
私は「ルールある経済社会」を実現する一環として、「ルールある飛行機座席」を実現したいと思います。
エコノミーがせめて新幹線並みの環境になり、ビジネスが庶民も必要に応じて選択できる料金になることを要望します。


志位氏も「ルールある飛行機座席」実現にむけ助力されることを期待します。

大阪府橋下知事の福祉医療制度改悪に反対します

昭和47年の老人医療費助成制度以来大阪府は医療の必要性が高く、経済的に困難にある老人をはじめ障害者・ひとり親家庭・乳幼児の医療費を助成を行ってきました。
その後平成12年平成16年に財政困難を理由に助成制度の改悪を行いました。
1月9日に大阪府は福祉4医療(老人・障害者・ひとり親家庭・乳幼児)の以下の改悪案をだしました。
①窓口一部負担を現行500円を800円に
②乳幼児医療では所得制限児童手当特定給付(収入860万円)から児童手当(780万円)へ切り下げ
③入院時自己負担1日1000円を2500円に
④休日・時間外診療はさらに500円にアップで1300円に


<これくらいはがまんできるはずだ>
「今回の案が実施されれば、患者1人の負担は年間5900円増となるが、橋下知事は『ここまでなら府民にお願いしてもギリギリで許される範囲と思う。今の財政状況で制度を維持するためには我慢も必要だ』と述べた。」(MSN産経ニュース2009/01/11) 食費を削り・被服費を削り・社会的交際費を削っている人にさらに5900円を負担しろこれくらいは我慢できるはずだと言うのです。
「痛みに耐えろ」と言って日本社会をぶっつぶした小泉首相を思い出させます。


<貧困の実態> 
平成18年の高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は 306万3千円、児童のいる世帯の1世帯当たり平均所得金額は 701万2千円となっています。
大阪の老人・障害者世帯の90%以上乳幼児世帯の20%がが所得150万以下です。我慢できるかどうかは想像力の問題です。
「お金がなければ医者にかからなければいい」と言ってのけることを許すかどうかは日本の社会の品格にかかわる問題です。


< 助成費は診療報酬の度重なる改悪と大阪府の助成制度改悪により減少しています。> 
平成16年260億から20年205億と55億減少しています。
これは府が16年に予測した20年263億を下回るものです。
福祉医療制度が府の財政を圧迫しているというのは正しくありません。 


<休日・時間外診療については800円を1300円にするはまったく筋が通りません>
大阪府は「救急医療機関における休日・時間外診療については、現在、国の診療報酬制度において、時間外等における救急医療体制の確保のため診療報酬加算が行われており、この取り扱いと整合を図り、応分の負担をお願いする観点から、500円の加算を行う。」としています。
たしかに現行の診療報酬制度では、救急医療機関における時間外診療には690円の初診料加算があります。これは医療機関の奮闘を評価するためのものです。
これを根拠に窓口負担を500円増やすとしていますが、その500円は大阪府の懐に入り大阪府が0.5億円費用が削減できるだけで医療機関の収入が増えるわけではありません。医療機関の苦労を口実に府の費用を削減するのは詐欺行為です。
医師の中にはいわゆる救急医療の「コンビニ受診」を減らすためにこの策に期待する向きがありますが、こんなことで「コンビニ受診」が減るとは思えません。
これを実施すれば「緊急性がないのに夜間・休日に救急外来を受診する軽症患者から、全額自費の時間外加算金を徴収することを地方厚生局に届け出ている病院が、123施設に上ることが読売新聞の調査で分かった。」(読売新聞 08年12月28日)この流れを加速することになります。
救急受診が必要でお金のない患者の受診を妨げる「角をためて牛を殺す」結果を招来することになります。

橋下知事の福祉医療改悪反対の世論が盛り上がることを期待します。

日本国政府は憲法に従いパレスチナ和平に積極的な役割を果たせ

連日報道されるイスラエルによるガザ侵攻は多くの民間人の犠牲者を出しています。
国連安保理事会は即時停戦とガザ地域への人道的支援を強化すること決議しています。
当事者であるイスラエルもハマスもこの決議を受け入れていませんが、安保理の非常任理事国の日本は決議の即時実践に向けて全力を挙げる必要があります。


報道によるとイスラエル軍は日中戦争の日本軍、ベトナム戦争のアメリカ軍の状態になっているようです。直ちに蛮行を停止させなければなりません。
「ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は9日、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に関し、国際人道法に抵触する可能性があるとして独立した調査を提案した。」(朝日新聞)「ゼイトゥン地区に侵攻したイスラエル軍が住民約110人を1軒の建物に誘導、戸外に出ないように指示した。24時間後、この家を砲撃し、約30人が死亡した。」(同)南京大虐殺やソンミ村虐殺を思い出せます。
ガザ戦闘による犠牲者は、すでに「死者774人 子ども・女性が300人超」(同)になっています。いかなる大義名分をつけようとのすべてのテロを含む軍事行動は民間人犠牲を伴い、国際人道法違反です。直ちに停止させなければなりません。また必ず法で裁かなければなりません。


日本国憲法はその前文に次のように宣言しています。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」
パレスチナのみならずイスラエル民衆が「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存」できるように奮闘しなければなりません。
安保理決議に棄権したアメリカに追従することなく即時停戦と人道的支援のための具体的行動を起こすべきです。
第二次世界大戦を経験した日本の使命です。
日本国政府が憲法に定められた責務を果たすことを要求します。

拝啓 渡辺捷昭トヨタ自動車社長殿

 私は病院に勤務する医師です。
トヨタが計画している非正規労働者の雇い止めを撤回していただきたくメールを送ります。


私の愛車はプリウスです。現在の車は2代目です。
それ以前もカムリを2代にわたって乗りました。
その前は他社の車に乗っていましたが、この4台一回の故障もなく貴社の車の性能に高い信頼を寄せています。また海外に旅行をした時、トヨタの車をはじめ日本車を見つけるとうれしく誇らしくなる日本人の一人です。
また新たな技術開発をされ高品質な車を提供されることを期待しています。


しかし今回、貴社が経済危機の影響を受けて減産を余儀なくされ、その対応策として「派遣切り」や「期間工切り」を推し進める一方で、株主配当や内部留保にはいっさい手をつけないと報道されています。大変な失望と怒りを感じています。


トヨタは名実ともに日本のリーディングカンパニーです。
そのトヨタが率先して、大量の失業者を出すこと、日本のその他の企業の選択する流れを決めることになります。
大量の失業者が出れば、国内の購買力は地に落ち、日本の経済と社会は壊滅的な打撃を受けることになります。


トヨタが一企業の「利益」だけを考え、日本の経済や国民生活を省みないならば国民のトヨタに対する信頼はなくなります。
キャノンが法を無視した偽装派遣をしたことで「キャノンのカメラはもう買わない」との声が上がっていることをご存じありませんか。
不買運動が起きなくても国民生活が破綻すればトヨタの国内売り上げは今以上に低下することは明らかです。
トヨタが日本の大企業の先頭に立ち、国内購買力を維持するため国民の雇用は守る立場で、経済危機に取り組む模範を示されることを要望します。


トヨタは豊田佐吉氏の豊田綱領の中で「温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし」と謳い、従業員を大切にすることを社風としていきました。
またトヨタ行動指針では「トヨタは、私たち全員が安心して働き、生活できるよう、雇用の確保と労働条件の長期安定的な維持向上を可能とすべく、業績向上に努力すると共に、一人ひとりが活き活きと働きやすい環境づくりに努めています。」として雇用の確保を明確に打ち出しています。
さらに現在の取締役相談役である奥田碩氏はかって、「従業員のクビを切るなら経営者は腹を切れ」、『「リストラすれば株価は上がる」は大間違い!』と述べられ多くの人々の称賛を受けています。
このようなトヨタの伝統と精神に照らして今の非正規労働者に対する対応はどうなのか再度検討していただきたいと思います。


トヨタは一企業でありますが、トヨタの動向はそれにとどまらない影響を日本国民にあえます。
企業の社会的責任を果たされることをお願いして筆を置きます。
よろしくお願いします。

敬具

企業の社会的責任と市民の社会的責任

企業から解雇され寒空に食事と寝る場所を求め人々のる姿が連日報道されています。
この現実を目の前にして、一つ一つの企業、一人一人の個人が今の社会をどう見るのか、どうあるべきと考えるかが問われています。

企業の行動が社会に大きな影響を与えることは、大気汚染や水俣病に見られる公害問題でも、最近の食品偽装問題でも明らかです。
企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)は、企業が利益を追求するのみならず、組織活動が社会へ与える影響に責任を持ち、あらゆる利害関係者からの要求に対して、適切な意思決定していることを明らかにする責任です。
その責任を果たせなければ社会的信頼を失い企業は存続できません。
企業は社会的責任を果たすことを強く求められています。

その観点から考えると、トヨタをはじめとする大企業が莫大な内部留保を持ち続け、また株主には配当を維持しながら、経営悪化を理由に労働者を大量に解雇している事態は、企業の社会的責任を果たしているとは言えません。
企業は「なぜ大量に労働者を解雇するのか。他に選択肢はないのか。」を社会が納得できるように説明する責任があると思います。
社会が納得しないことは撤回する必要があります。
そうしなければ社会的信頼を喪失することになります。

そして今こそ社会の一方の利害関係者である市民が市民の社会的責任(CSR:Citizen Social Responsibility)を果たすべき時です。
憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを維持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」としています。
憲法が保障する自由及び権利を維持することが、市民が不断の努力で果たすべき市民の社会的責任です。

企業は市民の労働と消費と資本提供によって維持されています。
企業の動きを監視し、ある場合は直接に、ある場合は国や法を使って間接に企業に影響を与える必要があります。
また国が国民の生活を守るよう声を上げるましょう。
フランスやドイツのEU諸国では企業の恣意的解雇を許さない社会的意思が明確に示されています。無関心や無力感を克服し一人一人の意思を示しましょう。

また国や企業に要求しているだけでは、眼前の困難は解決しません。
日本国民のみならず「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存」(日本国憲法前文)できる社会をつくるために助け合い活動(事業)をしましょう。
「年越し派遣村」が共感を広めています。
自分たちでできることから始めましょう。

こんな社会はこんな私たちがつくってきたのです。
だから私たちが社会的責任を果たせば、いいものに変えることができます。
力を合わせましょう。

犬の認知症と介護の社会化

家に帰るといつも見る庭の犬がいない。
朝起きるといつも聞く犬の鳴き声が聞こえない。
部屋にいると鳴き声が聞こえるときがある。空耳だ。
夜も眠れるしご飯も食べれる。
もちろん仕事もいつもどおりできる。
ペットロス症候群ではない。
空っぽの犬小屋を見ると悲しい気持ちになる。
娘は「涙をだして泣いたほうが楽になる」と言う。
でも涙はでない。


17年間飼っていた犬が死んだ。
この半年ぐらい「犬の認知症」で散歩にでてもまっすぐ歩けない。
小屋にいても狭い隙間があれば頭を突っ込み身動きがとれなくなる。
歩き出せば時計回りにぐるぐる回り、最後には目が回るのだろうその場に倒れこんでしまう。
尿をするときも便をするときもそれにふさわし姿勢がとれずによろめいて倒れてしまう。


死ぬ一ヶ月前は大変だった。
小屋の中や周りで尿や便をする。
食事ができない。食べる意欲はあるのだが、食べ物を口の中に入れ嚥下することができない。
介助してスプーンで口の中に食べ物を入れなければ飲み込めない。
犬の介護休暇があればとりたいぐらいだった。


極めつけは毎晩夜中の2時ぐらいに鳴きだすようになった時だ。
泣き出せば布団から起きて、体をさすり声をかけると泣きやむ。
ようやく布団に戻るとまた鳴きだす。
仕方がないので真夜中に散歩に出る。
昼間の散歩とはうって変わって元気に歩く姿を見ると、まるで人間の夜間せん妄と同じだ。
「こんなことは長くは続かない。夜鳴く間がまだいい時なのだ」と自分に言い聞かせた。


ある晩は、何をしても鳴き止まない時があった。
近所の人の迷惑を考えるとつらかった。
このまま寝ないで朝を迎えるとと思うと、明日の仕事が気になった。
途方にくれて思わず手で口をグッとつかんで塞いでしまった。
もちろん呼吸は鼻からできる。
うちに来てから一回も叩いたことがなったのに、無理やり口を塞いでしまった。
1分ぐらいだったのだろうか。
手を放すと、小屋に誘導すると静かに寝てしまった。


あんなことをしなければよかったと思っている。
認知症の医療や介護の専門家を自任する私が切れるとは。
介護者には「もし切れかかったら、その感情を否定することはありません。その場を離れなさい。そうすれば気分を切り替えることができる。」と指導してきた。
でも現実は大変であった。


犬の介護でこうであるから、人間の介護はもっと大変だ。
介護を個人や家族の責任にしてはならない。
そのままで放置するとたくさんの悲劇を生むことになる。
社会全体で介護をする体制を作らなければならない。
犬の介護と看取りを通じて、介護の社会化の必要性を痛感した。

ガザ空爆を行うイスラエルに抗議を

「イスラエル軍は28日、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの大規模空爆を続行し、現地の医療関係者によると、27日からの攻撃による死者は287人、負傷者は600人以上に達した。」と報道されています。
軍事目標に限定した空爆のうように言われていますが民間人が標的になっていることは明らかです。
テレビの映像は虚像ではなく、現実の生身の人間に起こっていることです。
いかなる口実をつけようとも民間人を対象にした無差別攻撃は戦争犯罪です。
ただちに攻撃を停止することをイスラエル政府に要求します。
あわせてイスラエルに経済軍事援助を続け、今回攻撃に対しても事実上の青信号を出しているアメリカ政府に対しても直ちにイスラエルに対する援助を停止することを要求します。
イスラエルに使う金を自国の国民の経済的破綻救済に使うべきです。
平和愛するすべての人がイスラエル政府とアメリカに対してなにかの抗議行動を行うことを呼びかけます。

雇用法案の可決と後期高齢者医療制度廃止法案の再継続審議を

国会が国民の命や暮らしのために何をしているか国民は注目しています。

雇用問題でも緊急の対策を国民は求めています。年末の寒空の下、派遣切りが横行し賃金を得る道も、生活をする住居も奪われる人が続出しています。

さすがに小泉時代にあったような「自己責任論」を振りかざし、職を失うのも自業自得だから自分で問題を解決しなさいと言ってのける人はほとんどいません。

多くの国民はなんとか解雇の対象になった労働者に助けたいと思っています。

与党の議員も同趣旨の発言を行っています。

先日、参議院で可決された「雇用法案」は、衆議院の厚生労働労働委員会に提出されています。

自公の連立与党は25日までに「雇用法案」を否決する構えで臨んでいます。

しかし法案を提案した民主党など野党の参議院での審議をつくさない強行採決的国会運営は、自公連立与党の居直り的対応を助長しています。

このままでは何も決まらないまま年末を迎えることになります。

国民が今望んでいることは国会が国民のための救済策を決定し実行へ進めることです。

議会を構成するすべての政党・議員の努力を期待します。

今国会にかかっている重要法案に「後期高齢者医療制度廃止法案」があります。

今春の通常国会で国民の圧倒的な要求で参議院で可決され、衆議院で継続審議となっています。

しかし今国会では11月19日、わずか1回の審議が行われたのみとなっています。

会期末を目前にして、「法案」は全く審議されていない状況です。

このままでは25日の会期末で廃案になる可能性があります。

国会は「何も決めない」だけでなく、「審議もしていない」状態です。

少なくとも審議をするべきです。

すべての政党と衆議院厚生労働委員会に対し、「法案を継続審議」にし、1月召集の通常国会で「法案」を可決・実施させることを望みます。

国会が国民のいのちや暮らしを守るため審議し決定する機能を果たすことを要望します。

医療崩壊と医師の林住期

 医師が不足しています。人口千人当たり医師数では、日本は2.1人とOECD加盟30カ国中下から4番目であり、少ない国の部類に属しています。
英米でも2.4~2.5人、ヨーロッパ先進国は3.5人前後であるのと比較すると如何に少ないかが分かります。


厚生労働省の「平成16年医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、医療機関と老人保健施設とその他の機関で医師として働いているのは27万5千人です。
そのうち、50歳代が20.5%、60歳代が9.0%、70歳以上が11.0%です。
実に50歳以上が40.5%を占めているのです。
50歳以上の医師の力が無ければ日本の医療は維持することはできません。


五木寛之は「林住期」で、古代インドの考え方として50歳から75歳の時期を林住期と紹介しています。
林住期は、社会人としての務めを終えたあと、すべての人が迎える、もっとも輝かしい「第三の人生」であり、50歳で生き方にひと区切りをつけ、林住期を「生活(暮らし)のためでなく(自分の人生を自分のために)生きること」を提案しています。


先日も同僚が定年を前に退職しました。
彼は自分のしてきた過酷な長時間過密勤務に触れながら五木寛之の言う林住期を、病院を退職してリセットして過ごしたいと言っていました。


五木は「好きな仕事して生涯を終えることができたら、それはたしかに幸せな人生である。」と述べ、仕事を生涯続けることを否定していません。
しかし退職した私の同僚を含め多くの50歳以上の医師が、「本当に自分のしたいことは何なのか」と今考えているのではないでしょうか。
そのうちの何割かが医師をやめようと決断したら日本の医療崩壊は雪崩をうって進むことになります。私も来年還暦を迎えます。
「林住期」の医師たちが喜びを感じながら働き続けられる環境が早急に整備されること切に望みます。

医療機関の新型インフルエンザ対策

国・自治体は、新型インフルエンザに対する各医療機関の役割と行うべき準備についての方針提起を早急にするべきである。
三重県桑名市では、職員や患者用にタミフル約900錠を備えるほか、マスク4750枚、エプロン9500枚、ガウンとマスクのセット864組、ゴーグル25個を購入する。備蓄にかける費用は約500万円と報道されている。
今後、各自治体の医療体制についての方針も決まってくるだろう。パンデミックにさいしては、公的病院だけではなく民間病院も役割を果たすのだろう。それぞれの病院がどんな役割を果たすべきかを明らかにしてほしい。そしてその役割を果たすべく各病院で行動計画を立案する必要がある。資材の備蓄をどれほどおこなうべきか、その費用はだれが負担するのか、の方針がほしい。
地域の民間病院からすると全く方針が見えてこない。 自力で資材の備蓄をするなど非常に困難である。どれだけを自院に備蓄し、どれだけが公の備蓄から支給されるのかもわからない。
国・自治体がイニシアティブをとって、すべての医療機関を視野に入れた方針提起が必要である。

11月30日近畿水俣病検診22名受診全員が水俣病と診断


1月30日兵庫県尼崎市の尼崎生協病院で民医連近畿地方協議会による水俣病検診がおこなわれた。チッソ水俣工場の排水に汚染された魚介類を日常的に摂取した摂取した疫学条件を持ち現在近畿圏で生活する方を対象に健診は行われた。今回は22名が受診し、すべての方に水俣病に合致する感覚障害が認められ、そのうち3名は求心性視野狭窄も合併していた。
民医連近畿地協は2006年以降今回の健診を含め7次に及ぶ健診をおこない約180 名の診察を行い8割の方を水俣病と診断している。診断は原田の水俣病共通診断書(http://www3.kumagaku.ac.jp/minamata/shindansho/shindansyo.html)で行われている。
受診者の多くは、感覚障害のため怪我や火傷をしてもすぐには気がつかない、持っているものをおとす、細かい作業ができない、頻回にこむら返りを起こすなどの症状で困っている。
水俣病公式確認から52年が経過した今も診断も付けられず、ましてや何らの救済も受けていない方が県外にも多くいることが明らかになっている。当該企業と国と県の責任で一刻も早い救済が求められる。

失言続きの麻生首相一度脳ドック検診を

今日の医局の朝礼でもまたまた麻生発言でもちきりだった。「麻生首相大丈夫なんでしょうか」「あんなこと糖尿病外来にきて患者さんの前で言ってみたらいい。きっと大騒ぎになる。」「どうせ今日中に発言を撤回するよ。」「言っていいこととそうでないことを判断できないのは、前頭葉機能が低下し『抑制』が低下しているのではないか」等々。
問題の発言は、麻生首相が経済財政諮問会議で発言したと報道された。「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金(医療費)をなんで私が払うんだ」である。そして麻生首相はたちまち今日、「病の床にいる人の気分を害したなら、おわびする」と陳謝した。たちまち陳謝するのなら、はじめから言わなければいい。
麻生首相の発言は疾病自己責任論の究極である。その当否をここで論評しない。私が気になるのは、たちまち陳謝しなければならないような発言を一国の首相が繰り返すことである。組織のトップであれば、自分がそう思っても、自分がそれを口に出せばどんな反応があるか考えながら発言するのは当然である。それができないのは国のリーダーとしては、重大な欠陥である。麻生首相のお得意の英会話で外国の首脳にどんなことを言っているのか非常に心配である。
首相は自分が非常に健康であると自任しているようであるが、私は非常に心配である。彼は自分の言動をコントロールする前頭葉の抑制機能が低下しているのではないだろうか。一般人相手なら公の場でこんなことを口にすることはない。しかし、国民の今と将来の生活を左右する首相に地位にある方だからあえて言いたい。ぜひ脳ドック健診を受けていただきたい。MRIや脳血流シンチと、仮名広いテストなど前頭葉機能検査をうけて前頭葉機能をはじめ高次脳機能には問題がないことを確かめて、その結果を国民に明らかにしてほしい。病気が見つかればぜひ遠慮せずに保険を使って治療してほしい。早期発見早期治療が医療費節約の道である。麻生首相よろしく。

大阪空襲訴訟支援

 大阪空襲訴訟原告団結成集会支える会発足の集いに参加しました。原告の一人の方が私の外来に通院されている方で、その方からお誘いを受けたからです。
11月24日大阪市立中央会館で行われました。「太平洋戦争末期、大阪の街が火の海となった大空襲から63年。体や心に傷を負い、苦難の人生を強いられてきた空襲被災者と遺族が手を携え、戦後、何ら援護策を取ってこなかった日本政府を相手に『謝罪』と『補償』を求める集団訴訟を12月8日起こすことになりました。残りの人生が長くない私たちにとって、苦渋の選択です。」(大阪空襲訴訟を支える会入会お願いより)18名の被災者が訴訟に参加されます。集会では原告から被災の様子と戦後の苦難の人生の一端が紹介されました。「ヨーロッパ諸国では民間被災者に対しも救済措置をおこなっているのに対して日本政府は、民間の一般戦争被災者に対して『国と雇用関係がなかった』とか被災者があまりにも多く押し並べて誰でもが被災者だったいわゆる『受忍論』との理由で一切の援護を拒否している。」(同上)今回の訴訟はこの国に対する訴訟である。同様の訴訟は07年3月東京でも行われています。
一般人に対する無差別爆撃は明らかに戦争犯罪です。アメリカの人道に対する罪は今後も追及していく必要があるのは当然です。しかし日本国政府がアメリカに宣戦布告をし、国民を戦争に動員し、敗戦の惨禍を招来しました。さらに戦後戦勝国アメリカに対しては一切の請求権を放棄し、民間の一般戦争被害者に対しては救援を放棄してきました。国の責任は重大です。原告たちが「司法に訴えてでも、国に謝罪と補償を求めることは、金銭の問題だけではなく、戦争被害者が『人間としての尊厳』取り戻し、再び悲惨な戦争をさせないための闘い」(同上)です。
20世紀以降の戦争はすべて一般人を殺戮する戦争です。今やあらゆる兵器の標的は民衆です。その民衆を守ることは、「民衆を守るという口実で民衆を殺す」戦争や武器ではなしとげられません。日本国憲法の精神にのっとり戦争を未然に防ぐために、日本政府と国民がなすべきことは山積しています。その前提として過去の戦争被害の事実をみとめ被害者の救済をしなければなりません。大阪空襲訴訟を進めることは平和憲法を活かし平和をつくるための大きな力になります。長い運動になるかもしれませんが、大阪空襲訴訟を支援していきたいと思います。

被爆者医療ひとすじに 被爆医師小林栄一の戦後史  清風堂書店刊


小林栄一医師とは
先生は大阪市此花区にある此花診療所に58年間勤務され、医師として被爆者として、被爆者に寄り添いながら診察して来られました。これまでのべ5000人の被爆者を診察し、82歳の現在も被爆者全員救済の道を目指し被爆者医療に奮闘されています。43年長崎医専に入学し、45年8月9日爆心から700mにあった長崎医専校内で被爆されています。教職員、学生の死者は890余名あったとのことです。文字どおり生死を分けた一瞬を体験されています。この本はその被爆医師小林栄一氏の戦後史を綴ったものです。

原爆症に対する考え方
先生の被爆者医療に対するスタンスは、「広島・長崎の被爆者が人類の歴史上核兵器による最初の犠牲者であること。従って、被爆者の示す病的な状態はそれが明らかに原爆と無関係であることが証明されぬ限り、すべて、原爆に直接的、副次的に関係する可能性があると考えて対処しなければならない」です。
「がんの増加、貧血、白血病、熱傷・外傷などのケロイド、肝臓障害、原爆ぶらぶら病などいろいろな疾病で苦しんでいる」被爆者に医療的な支援をするとともに、公的な救済・被爆者認定を要求して運動を進めてこられました。「がん患者の増加を考えると、高齢化した被爆者の全身管理が必要となります。」と述べられています。
そしてこのような活動を通じて医学的にも被爆被害の実相を明らかにすることが核兵器廃絶の推進力になると考えておられます。

医師としての責任
この本では、被爆医療における医師の役割について繰り返し触れられています。
「また原爆と関係あるのだろうかとの患者の質問に対して、原爆のことは知らないとか、40年もたっているのだから原爆の影響などまったくない筈だとか、被爆者の心を理解しない返答が多い」「この際必要な医者の診断書についても、こんな面倒な診断書は書けない、書き方がわからないと断わったり、また折角書いても、要領が悪いために却下になったりする例も多く、そのために不信感を抱かせている。」「原爆に対して興味がない、被爆者はいろいろ難しいことがあるので御免だと、医者から拒否されている数々の例」があると指摘しています。
日本の医師が原爆放射線被害の実相についての知らないのは恥ずかしいことです。この本を読めば知識を身につけることができます。また被爆者から求められる各種診断書の書き方も詳述されています。
大阪には被爆者が892名(07年度末)おられます。広島・長崎・福岡に次ぐ全国4位です。大阪の医師がこの本を読まれ、先生の後継者とまではいかなくとも被爆医療の初療医になられることを期待します。

麻生首相の社会的常識

 麻生発言に多くの医師は腹を立てている。 今日の医局の朝礼でもその話でもちきりだった。「力が抜けた。せめて連続32時間勤務や昼ごはんも食べずに働いている医師たちに気遣いや激励の言葉がほしい。」「私が麻生さんの経営する病院の医師であったら、直ちに辞表を提出して病院を辞めます。」「麻生病院の医師の今後の動向が注目だ。」等々。
麻生首相は「医師は社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言し、翌日撤回した。医師に社会的常識があるのかどうかは医師が弁解することではない。その当否は事実に沿って検証していただければよい。しかし私は、そんなことを言う政治家の方が社会的常識を欠落していると思う。医療崩壊の渦中で医療現場から立ち去りたいと思っている医師が少なくない今、そんな発言をするのは「空気が読めないと奴」と言わざるをえない。トップリーダーが一度発言した発言を撤回すれば済むと思っていることこそ社会的常識に外れているのではないか。 
医療崩壊という現実を招来したのは医師養成数を削減し、社会保障費を毎年削減してきた政府にその責任がある。そのことを首相が自覚していないことが問題だ。主義主張を超えてこれまでの医療政策を中止し、医療再生の政策を実践する必要があると考える。 

定額給付金2兆円を消費税2ヶ月間一時停止に

 定額給付金は世紀の愚策である。2兆円規模の事業で、財源は「霞が関埋蔵金」と言われる財政投融資特別会計の余剰金を充てるそうである。11月11日付けのアサヒコムによると「麻生首相が景気対策の目玉として打ち出した定額給付金について、「必要な政策だと思う」は26%にとどまり、「そうは思わない」が63%と、否定的な見方が圧倒的だった。」これが景気浮揚につながるとは誰も信じない。麻生首相が財政健全化に向け3年後に消費税率を引き上げる意向を表明している以上なおさらである。麻生首相にしてみれば下々に配る「おひねり」程度の感覚かもしれないが、一般国民にしてみれば給付金を配って人気をとって選挙を乗り切り、後で税金を上げると公言されれば、「エビ鯛」作戦が見え見えで「馬鹿にするのも、えーかげんせい」と言いたい。国民が首相の「お情け」に感謝をして普段買わないものを買う気分ではない。「おひねり」を配っても消費が増え景気が浮揚することなど絶対にあり得ない。
忘れてはならないのは平成11年度に実施された地域振興券である。景気回復には全く効果がなかった。それだけではなく政府は、7、000億円の地域振興券を交付するために経費698億38百万を支出したのである。支給額の10%の無駄な税金が支出されたのである。今回は対象も多く経費もさらに増加すると思われる。
仮に2兆円の財源がありそれを景気浮揚に充てようとするならば、消費税徴収の一時的停止をすのが、もっとも経費がかからず消費を喚起する政策だと考える。06年度の消費税は国の税収が10兆4633億円、地方消費税が2兆6289億円で合わせると約13兆円である。2兆円と言えば消費税56日分である。すなわち2ヶ月間の消費税ゼロに相当する。09年1月から2月まで消費税をゼロにすれば消費は必ず伸びる。政策の実施に経費は全くかからない。政府与党のみならず野党各党が検討されることを要望する。

勝間和代の日本を変えよう(毎日新聞社)

経済評論家・公認会計士でベストセラー作家である勝間和代が日本の変革とポスト資本主義について書いています。若者の希望喪失、依然続く女性差別、固定する富と貧困。この日本現状を変えるために一人一人の行動を訴えています。「「日本を変える」目的は、もちろん、自分たちや自分たちのあとの世代が、より幸福になるための条件を手に入れることです。」 「自分だけの満足、自分だけの喜びは、長続きしないということです。人のために何かでき、人に喜んでもらえたときの幸福感ほど、大きく、また長続きするものはありません。」「仕事にしても、いかにお金がもうかったところで、人に喜んでもらえないならば、その仕事には喜びもやりがいもないと思います。」
そのために、自分のできることを無理のない範囲で実践すると呼びかけています。具体的には事実を多くの人に知らせること、政治を変えるために選挙に参加すること、そして「個人も収入の5%以上を寄付に、5%以上の時間を社会貢献に充てましょう」を提案している。
日本では弱肉強食の自由競争を主張する新自由主義が依然幅を利かせています。努力を正当に評価されることは大切ですが、人を踏みつけにすることは許されません。それと明確に一線を画する主張がマスメディア出てきたことは歓迎すべきことです。
個々の問題では意見の違うこともあります。勝間は「終身雇用を考えなおし、柔軟な雇用体制をもっと検討しましょう」と提案しています。終身雇用制の見直しが経営者による恣意的な解雇の自由につながる危険があります。しかし意見の違いを保留し、事実を共有し一つ一つ変えていくための実践をともにしたいと思います。ポスト資本主義についても大いに語りあいたいものです。ひょっとすると今はそんなに悪い時代ではなくわくわくするような未来が実現する可能性があるのかなと思わせる本です。一読をお薦めします。

勝間の15の提言
全体を変えるための3つの提言
1 一人でも多くの人が投票しましょう
2 政府の情報公開と数値目標をもっと充実させましょう
3 終身雇用を考えなおし、柔軟な雇用体制をもっと検討しましょう
男女共同参画・少子化対策のための8つの提言
4 家族政策費の対GDP比率を現状の0.7%から1.4%に倍増させましょう
5 家族省を創設し、縦割りになっている家族施策を統括しましょう
6 総労働時間を規制し、ワークシェアリングを導入しましょう
7 女性に対する統計的差別を撤廃しましょう
8 税制において、配偶者控除の金額を引き下げ、子どもの扶養控除の金額を引き上げましょう
9 保育園の待機児童ゼロを目指しましょう
10 非嫡出子と嫡出子の差別を撤廃しましょう
11 パパ・クオーター制を導入しましょう
ワーキングプア・貧困対策のための4つの提言
12 正規雇用と非正規雇用の均等待遇を実現しましょう
13 最低賃金の引き上げを図りましょう
14 もっと予算を使うことで公教育を充実させましょう
15 個人も収入の5%以上を寄付に、5%以上の時間を社会貢献に充てましょう

橋本知事の自己責任論

大阪府の橋下徹知事が10月23日、高校生と私学への助成金削減プランをめぐり、意見交換会を行った。報道によると意見交換会は、橋下知事の「単なる子どもたちのたわ言みたいにならないように、僕もかなり厳しくそこは反論していくので、そこはしっかり、きょうは議論したいと思いますので、よろしくお願いします」という宣戦布告で始まった。
橋本知事は言う。「今の世の中は、自己責任がまず原則ですよ。誰も救ってくれない」 橋本知事は日本は困っていても誰も助けない自由競争で弱肉強食の社会と考えているようである。私は日本をそんな国柄の国にしてはならないと思っている。 自己責任とは自己と他者との関係を規定した概念である。個人は自己の選択した行為の結果に責任を負い、他者の責任にしないということである。80年代以降新自由主義が台頭し、自己責任概念を私と公の関係に置換し、国民の基本的人権を保障する国家の責任を縮小し、市場経済の自由競争のなかに敗者の自己責任を追及してきた。その日本での具体化が小泉改革で、後期高齢者医療制度や障害者自立支援法に結実している。それに日本国民の多数派はNOを表明し現在の自公政権の凋落となっている。国家と国民の関係を規定している憲法は国家が国民の基本的人権を保障する義務を明らかにしている。憲法が真に生かされる社会にしなければならない。 橋本知事は更に高校生たちにこう言う。「皆さんが完全に保護されるのは義務教育まで。高校になったらもう、そこから壁が始まってくる。大学になったらもう定員。社会人になっても定員。先生だって、定員をくぐり抜けてきているんですよ。それが世の中の仕組み。」 憲法は教育をうける権利と義務教育についてこう書いている。 「すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育をうける権利を有する。 すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」(憲法第6条) 読めばわかるように義務教育の義務とは子弟に教育を受けさせる親の義務である。「その能力に応じて、ひとしく教育をうける権利を有する」教育は義務教育のみならず高校・大学も含んでいる。公はその義務を負っているのである。知事の意見は憲法に対する無知としか言いようがない。 そして橋下知事は「じゃあ、あなたが政治家になってそういう活動をやってください」「それはじゃあ、国を変えるか、この自己責任を求められる日本から出るしかない」と切り捨てた。政治をかえる活動をするのは望むところである。しかし自分は選挙で選ばれた知事である。文句があったら当選してみろ言う知事の性根には我慢がならない。選挙公約で一切触れていなかった「維新改革プラン」を実行していいとと思っているのか。選挙を言うなら一度辞任して選挙をやり直してはどうか。また知事は選挙に当選すれば何をしてもいいと考えているのであろうか。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」(憲法第99条)を噛みしめてほしい。知事には憲法を尊重し擁護する義務がある。憲法に反することはしてはならない。 最後に「嫌ならこの国を出て行け」は、戦前の非国民呼ばわりを思い出させる。「子どものたわ言」である。弁護士バッジが泣いている。

竹中平蔵氏の平等

「頑張っている人も頑張っていない人も一緒になるというのは、ものすごく不平等だと私は思うのですが、これは幼少の体験が染みついているのだと思います」(竹中式マトリクス勉強法 竹中平蔵 幻冬舎)
竹中氏は小泉元首相と二人三脚で構造改革をすすめ、「頑張っている人」と「頑張っていない人」を差別する社会=格差社会を作り上げました。彼のいう「頑張っている人」とは「人生を戦い抜く武器としての勉強」をして勝ち抜いた人を言うのです。もちろん一流大学を出て一流銀行に勤めアメリカに留学し大臣になった竹中氏は自分を「頑張っている人」と思っているのでしょう。その対極にある派遣・パート・アルバイトに甘んじる不安定雇用の労働者は「頑張っていない人」に位置づけられるのでしょうか。低賃金で酷使されネットカフェで眠る労働者は「勉強」をしてこなかったから自業自得なのでしょうか。未来に希望がないところに「勉強」をする気力がどうしてわくのでしょう。人生を戦い抜く武器としての勉強」をしても負けてリストラされた人は「頑張っていない人」なのでしょうか。「頑張っている人」が「頑張っていない人」を踏みつけにする「平等な」社会構造は変えなければなりません。
竹中氏は金や権力をもつものが一層金や権力を集めていることは不平等と思わないのでしょうか。富裕層の金がマネーゲームで頑張らなくてもさらに増えています。小泉家のように国会議員の二世たちは頑張らなくても議員になります。これこそ不平等の極みです。
たしかに社会には頑張る人が必要です。しかし頑張りは勉強をして人生を戦った勝ち負けで測るものではありません。社会や文化への貢献で評価するものです。頑張った人が報いられることが大切です。それが頑張り続ける動機付けになります。例えば頑張って介護の勉強をし、日々働く介護労働者は報いられておらず、どんどん職場を去っています。頑張りが評価される社会をつくる必要があります。

後期高齢者医療2

先日、母親とビールを飲みました。「いけしんは、いくつになったんや。」(この7月で59歳や)「そうかそんな年か。ところで私は何歳や。」(90歳や)「へー90歳か。びっくりしてしまうわ。」その時私はこの時間を大切にしたい、いくつになっても、不自由なところがあってもここにいてほしいとしみじみ思いました。
こんな気持ち、「後期高齢者」とか「終末期」とか言う言葉を弄ぶ政治家はわかっていない。患者、医療者と国民の気持ちを無視した政治の結果である医療・介護の崩壊はもう一刻の猶予も許されない状態になっています。普通の市民の気持ちが大切にされる世の中になることを望みます。

自らを殺したくないものは来たれ

今は理不尽な世の中です。病気になったり事故を起こしたりすると、収入をうしない路頭に迷う可能性があります。安心できる老後の生活設計なんか、紙の上にも書くことができません。こんな世の中を続けさせているのは、こん棒や銃剣といったむき出しの暴力ではありません。私たちに植えつけられた「自分だけはうまくやれるのではないか」という勝ち組幻想と、「みんな自分のせいだ」という自己責任論の呪縛です。でも目の前で困難に陥った多くの方をみている私たちは「自分はこうはならない」「これはあなたのせいだ」とは考えらえません。そして自己責任論のいきつくところは自殺です。毎日100人近い人が自殺しているのが今の日本、誰でも自殺者3万人のプラス1になる可能性があります。
こんな世の中は間違っている。幻想と呪縛を打ち破ろう。不幸は自分のせいではない、幸せは自分だけ確保することはできない。みんなが幸せになる世の中をつくりたい。小林多喜二は「殺されたくないものは来たれ」(蟹工船)と書きました。いま私たちは「自らを殺したくないものは来たれ」と叫びたい。

後期高齢者医療

○後期高齢者医療制度がいろんなところで話題になっている。年金からの保険料徴収、定額医療に医療制限。しかたがないという声はほとんど聞かない。「こわいですね」、これが一番多い。何がこわいのか。この国が自分を含めた高齢者をあからさまに邪魔にして見捨てた。かつて本土を守るためにとの理由で沖縄県民に自決を命令した国。それを再び高齢者に対して行う。それがこわい。○仕方がないと言い捨てるのは官僚と与党政治家だけである。国の財政を守るためにという理由で高齢者を踏みつけにする。したり顔の官僚や与党政治家の想像力の欠如と人間性の欠如が憎い。ただでさえ自分で自分の面倒を見られなければ早く死んだほうがましとの風潮がつよいこの国で、高齢者医療制度を実行することはそれに拍車をかけることになる。誰かを踏みつけにして守られる、この国の繁栄も個人の幸せもあり得ない。○文句があるなら対案をだせという。対案ならいくらでもだそう。民医連は「医療福祉再生プラン」を発表している。ただはっきり言いたい。憲法を守り政治に高齢者を含めた一人ひとりを大切にする世の中をつくることが官僚や政治家の使命ではないか。国民に不安ではなく、安心を与えるプランをつくり実行するのが君たちの仕事ではないか。それが出来なければ職を辞しなさいと。

韓国光州訪問

韓国の光州に行ってきました。光州事件の現場に立ちたいと思ったからです。光州事件とは80年5月、韓国全斗煥軍政下の光州で起きた民主化を求める運動と軍事政権による弾圧のことです。
200人以上の民衆が虐殺された現場に立ち、「歴史の流れの中で自分も生きている」との感慨を持ちました。当時高校生で市民軍に参加した人たちと会いました。戒厳軍が無差別に市民を殺害するので、やむにやまれず市民軍に参加し銃を持ったが一発も発砲できずに逮捕され、国家反逆者として軍事裁判にかけられ投獄された話を聞きました。
朝日新聞の縮刷版を見ると事件の記事が80年5月だけで144本あります。でも私には記憶がありません。当時私は医師になりたてで勉強に精をだしていました。「また軍事独裁政権がやっている」と思ったぐらいだったのでしょうか。
今も戦争や貧困等々多くの情報が発信されています。しかし私にもいくつもの課題・困難があります。そのために、関心の範囲を狭めて情報から目をそらしていないか。情報の向こう側にいる生身の人間と共感できる想像力を欠いて、画面や紙の上の知識にしていないか。常に自戒したいと思います。普通の市民の共感と連帯こそが平和な世界をつくると考えます。